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新書ピックアップ(朝日新聞2018年12月8日掲載)

『ベートーヴェンを聴けば世界史がわかる』 

 聴衆がいてこそ成り立つ音楽は、政治・経済・思想に密接に関わる芸術でもある。「神の秩序」を表すグレゴリオ聖歌から、市民層が台頭する時代に新たな音楽を生み出したベートーヴェン、大都市の文化を「根無し草」と批判し、「民族」を見いだした“グローバリズム批判の元祖”ワーグナー、そして20世紀音楽まで、クラシックの歴史をひもとく。
★片山杜秀著 文春新書・864円

『モンゴル人の中国革命』

 礼節と名誉を重んじる草原の民は、20世紀に南北に分断され、南側の内モンゴルは革命運動の中で独立をはばまれてきた。独立や民族統一を唱えた日本は満州国経営を優先し二重支配に。のちに中国共産党によって分断に利用された。国共内戦に巻き込まれ、共産党の資金源としてアヘン栽培の地となり、独立の願いは裏切られる。「二十世紀におけるモンゴル人の歴史を、モンゴル人の視点で書く」ことが自らの使命だとつづる南モンゴル出身の静岡大教授による現代史。
★楊海英(ようかいえい)著 ちくま新書・1015円

『新版 動的平衡2』 

 2011年刊行の『動的平衡2』を加筆・修正し、時間についての新章を加えて新書化した。「私たちはなぜ『うま味』に惹(ひ)きつけられるのか」「海外旅行に行ったとき、お腹(なか)の調子が変になるのはなぜか」「生命が宇宙からやってきた可能性はあるか」など、身近な問いかけから読者をサイエンスの世界へと導く。
★福岡伸一著 小学館新書・886円

『もしかして、私、大人のADHD?』

 副題は〈認知行動療法で「生きづらさ」を解決する〉。不注意、多動性、衝動性を主な特徴とするADHD(注意欠如・多動症)やその傾向を持つ成人に向けて、原因や治療法などを臨床心理士が解説。片付けや時間管理ができないといった困りごとをどうしたらよいのか。薬に頼らずに実践できる対処法を具体的に示し、周りの人のサポートのあり方も詳しく説明する。
★中島美鈴著 光文社新書・842円