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「サカナとヤクザ」書評 漁業の不透明な取引にまみれた実態

評者: 石川尚文 / 朝⽇新聞掲載:2018年12月15日
サカナとヤクザ 暴力団の巨大資金源「密漁ビジネス」を追う 著者:鈴木智彦 出版社:小学館 ジャンル:ノンフィクション・ルポルタージュ

ISBN: 9784093801041
発売⽇: 2018/10/11
サイズ: 19cm/319p

サカナとヤクザ 暴力団の巨大資金源「密漁ビジネス」を追う [著]鈴木智彦

 先日の漁業法改正で、ナマコやアワビの違法な採取に厳しい罰則を科す方針が決まった。組織的な密漁が横行しているためという。
 罪を承知で海を荒らすのは誰か。本書は、そこにヤクザが介在していることを、生々しく描き出す。
 暴力団関連の潜入ルポを手がけてきた筆者は、つてをたどり現場に通う。闇夜にアワビを水揚げする密漁団と海上保安庁の攻防を聞き出し、さらに市場に流通するルートを探ろうと、築地の業者で4カ月働く。
 北海道では中国発の「ナマコバブル」を追う。少人数で照明もつけずに深く潜るため、死亡事故も頻発する。それでも一獲千金を狙い密漁が繰り返される。
 ことの性質上、核心部分ほど匿名の登場人物が増えるのが歯がゆいが、その分、状況描写は具体的だ。
 私たちが何より知るべきは、最後に描かれる今のウナギ漁業の姿だろう。国内外での不透明な取引にまみれた実態を、見過ごすことはできない。