ドイツ系ユダヤ人の政治哲学者ハンナ・アーレントとマルクスを中心に労働について研究し、著書「アーレントのマルクス」(人文書院)で労働と全体主義についてまとめた。
アーレントは「マルクスは労働を人間の本質的営みとして賛美した」と批判し、肥大化した労働が人びとを私的利益の追求へと走らせ、公共的なものの衰退を招き、全体主義へとつながると説いた。だが、百木さんは「アーレントはマルクスを誤読していたが、そこにアーレントの労働思想の中心があり、両者は近代資本主義社会への批判意識では共通していた」とみる。
大学卒業後、3年間会社勤めを経験した。「残業も多く、日本人の働き方に疑問を持った」。非正規雇用や格差社会、長時間労働、過労死などが社会問題化されつつあった。隣人との対話や政治的議論、ボランティアなど社会的活動の余裕さえない。そこに全体主義への道が開かれているのではと考える。「生活の中で労働の占める割合が大きくなり過ぎている。アーレントの思想を手がかりに働き方を考えていきたい」(池田洋一郎)=朝日新聞2018年12月26日掲載
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