「上方らくごの舞台裏」書評 「目撃者」が語り継ぐ落語史
評者: サンキュータツオ
/ 朝⽇新聞掲載:2019年01月19日
上方らくごの舞台裏 (ちくま新書)
著者:小佐田定雄
出版社:筑摩書房
ジャンル:新書・選書・ブックレット
ISBN: 9784480071859
発売⽇: 2018/12/05
サイズ: 18cm/318p
上方らくごの舞台裏 [著]小佐田定雄
資料的価値も高い名著。
落語作家の小佐田先生は、米朝師や枝雀師以外にも上方落語の舞台裏を知る貴重な存在。松鶴、先代文枝、米朝、先代春團治。上方落語四天王亡き今、彼らや、彼らに噺(はなし)を仕込んだ人物の記憶を記述できる人も少なくなった。これは、もっとも身近にいた「目撃者」でもある著者の、語り継がなければならない歴史を記した本。上方落語を象徴する38席の演目と、その高座にまつわる思い出。よくぞ残してくれたという内容ばかり。音源、映像の書誌情報も可能な限り示してある。
『ブラタモリ』でタモリさんが発見した資料を、台本化して、鶴瓶師匠が口演するに至った「山名屋浦里」成立の経緯、さらには歌舞伎化された経緯も書かれているが、それを売りにしないのが本書の品の良いところ。「第2章 お囃子(はやし)さん列伝」からも、鳴り物発祥の上方落語のプライドと、小佐田先生の使命感が読み取れる。終わってない、ここからです、上方落語。