『サルと屋久島 ヤクザル調査隊とフィールドワーク』(旅するミシン店・1728円)は、表紙こそサルのイラストでほんわかした雰囲気だが、中身はアカデミックな野外調査の実態と、携わった学生の汗と青春を記した硬派な本だ。
ユネスコ世界自然遺産の屋久島で、30年にわたり野生のニホンザルの生態調査が続けられている。毎年、参加者の募集があり、これまでに研究者や大学生らのべ1364人が参加してきた。名付けて「ヤクザル調査隊」。その活動の歩みを調査隊事務局長の半谷吾郎・京都大霊長類研究所准教授とOBの松原始・東京大特任准教授がまとめた。
発端は農作物を荒らすサルの分布状況をつかむ目的だったが、長期にわたる調査は貴重なデータとして学会でも評価されている。しかしその裏には、炎天下の森に一日中座ってサルの出現を待つ忍耐や、台風の急襲によるドタバタなど幾多の苦労があった。決して楽ではないのに多くの若者を引き付けてきたのは、やはり大自然に触れる魅力ではなかろうか。(久田貴志子)=朝日新聞2019年1月19日掲載
編集部一押し!
- 新作映画、もっと楽しむ 映画「本心」主演・池松壮亮さんインタビュー AIで亡き母と再会する時代「誰もが自分ごと」 根津香菜子
-
- インタビュー 小川糸さん「小鳥とリムジン」インタビュー 「人生、笑って終われたら勝ち」 清繭子
-
- インタビュー 「モモ(絵本版)」訳者・松永美穂さんインタビュー 名作の哲学的なエッセンスを丁寧に凝縮 大和田佳世
- えほん新定番 きたむらさとしさんの絵本「ミリーのすてきなぼうし」 スケッチブックにアイデアの種をまいて 坂田未希子
- 本屋は生きている よもぎBOOKS(東京) 絵本や「好き」を集めていく。どこにも生える万能薬のように 朴順梨
- トピック ポッドキャスト「好書好日 本好きの昼休み」が100回を迎えました! 好書好日編集部
- インタビュー 寺地はるなさん「雫」インタビュー 中学の同級生4人の30年間を書いて見つけた「大人って自由」 PR by NHK出版
- トピック 【直筆サイン入り】待望のシリーズ第2巻「誰が勇者を殺したか 預言の章」好書好日メルマガ読者5名様にプレゼント PR by KADOKAWA
- 結城真一郎さん「難問の多い料理店」インタビュー ゴーストレストランで探偵業、「ひょっとしたら本当にあるかも」 PR by 集英社
- インタビュー 読みきかせで注意すべき著作権のポイントは? 絵本作家の上野与志さんインタビュー PR by 文字・活字文化推進機構
- インタビュー 崖っぷちボクサーの「狂気の挑戦」を切り取った9カ月 「一八〇秒の熱量」山本草介さん×米澤重隆さん対談 PR by 双葉社
- インタビュー 物語の主人公になりにくい仕事こそ描きたい 寺地はるなさん「こまどりたちが歌うなら」インタビュー PR by 集英社