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2019年本屋大賞に瀬尾まいこさん「そして、バトンは渡された」 【受賞コメント動画有】

2019年本屋大賞を受賞した瀬尾まいこさん(左)と昨年の受賞者・辻村深月さん

 全国の書店員が一番売りたい本を投票で選ぶ2019年本屋大賞(第16回)が4月9日発表され、瀬尾まいこさん(45)の小説「そして、バトンは渡された」(文芸春秋)に決まった。

 受賞作は、幼くして母を亡くし、血縁のない大人たちにリレーされるように育てられた女子高校生の成長する姿を描いた家族小説。義父らとの日常を通して、家族の形を問いかける。
 瀬尾さんは奈良市在住で、元中学の国語教諭。2001年、「卵の緒」で坊っちゃん文学賞大賞を受賞し、翌年に作家デビュー。05年には「幸福な食卓」で吉川英治文学新人賞、09年には「戸村飯店 青春100連発」で坪田譲治文学賞を受賞した。瀬尾さんは都内での発表会で「身内のように私の本に愛情を注いでくれた書店員の皆さんには感謝しています」と話した。
 本屋大賞は17年12月~18年11月に出た日本の小説が対象。全国493書店の店員623人が1次投票で10作に絞り、2次投票で大賞を決めた。

瀬尾まいこさん受賞コメントは以下の通り

 本日は素晴らしい賞を、ありがとうございます。

 いま、ここに立って自分が思っていた以上に嬉しくて感動していることにちょっと驚いています。

 本屋大賞、素晴らしい賞で私も大好きな賞なので嬉しいのは当たり前なんですが、いま目の前に本のうちわを持ってくださっている書店員の方がいらっしゃったりすると、胸がジーンとなったり、小説を書いたのは1年以上前なので、こういう喜びってじわじわじっくりと感じるものかなと思っていたんですけど、なんか今この舞台に走ってきてゴールテープを切って、すぐさまトロフィーを渡してもらったような鮮やかなはっきりとした喜びが、いまここにあります。

 それは、本を読者の方に伝えてくださっている皆さんが目の前にいるというの一番大きいですし、書店の方が本屋に並んでから1年以上経ったいまでも応援してくださっていて、そのおかげで私自身、この作品の中に長い間いられたからだと思います。

 この「そして、バトンは渡された」は自分で書きながら、書いている途中に「あっ、私ってこんな気持ちが書きたかったんだ。ここに書いた気持ちは普段思っていることなんだ」と気づけた作品です。

 ひとりの女の子にいろんな大人たちが血が繋がっていたり、長い時間だったり短い時間だったり、いろんな立場でありながら親として関わっていく様子を描いた作品なんですけど、書きながら「愛情を注がれることはすごく幸せなことなんですけど、愛情を注ぐ当てがあることはもっとはるかに幸せなんだ」ということを改めて感じました。

 私自身、結婚前は中学校で働いていたんですけど、厄介で繊細でまどろっこしい時期でもあるんですが、中学生ってもれなくみんなキラキラしていて、本当に一緒にいるだけで自分では動かせない、大人との関わりでは動かせない心の奥の方を中学生たちに動かしてもらっているので、本当に毎日が色濃くなったのを思い出します。

 いまは中学校では働いていなくて、5歳の娘がいて、ちょうどいまごろ夫が家でてんわやんわ、お風呂にいれているころですが、無事にお風呂に入れているでしょうか?不安です。それはさて置き、5歳の娘がいるんですが、中学生がいたころと同じ、「私の明日を連れてきてくれるのは娘です」。自分よりはるかに大きな未来が、可能性を秘めた若い世代といられることは大きな喜びだと思います。

 この作品自身もたくさんの人に愛情を注いでもらった作品になりました。文藝春秋の皆さんには本当に仕事が遅い私なんですが、いつも暖かく見守ってください本当にありがとうございます。そして、書店員の方々には本を書いた後、たくさんの感想を読ませていただいたんですが、「書いてよかった」とホッとする感想や「わかってもらってるんだ」と嬉しくなるような感想がいっぱいで本当に励まされました。そして、書店に訪れた時は「こんなふうに展開しているんです」とすごく可愛くレイアウトしてくれて、ポップ作って、本を並べてくださってる様子を見せていただいたり、「フリーペーパー作りました」っていう話を聞かせていただいたり、「本当にこの人、私の身内だっけ!」というくらい、この作品に愛情を注いでくださって、本当に感謝しかないです。

 皆さんにこうやって愛情を注いでもらえる作品になったことを本当に嬉しく思います。今後も皆さんに楽しく読んでいただけて、誰かに伝えたいなと思っていただけるような作品が書けるよう努めていきたいと思います。本当にありがとうございました。

    ◇

 また、翻訳小説部門は「カササギ殺人事件」(アンソニー・ホロヴィッツ著、山田蘭訳、創元推理文庫)が受賞。17年11月以前に刊行された本のなかから書店員が売りたい本を選ぶ発掘部門のなかから、「超発掘本!」として「サスツルギの亡霊」(神山裕右著、講談社文庫)が選ばれた。

◆2位以下の順位は以下の通り

2、『ひと』(小野寺史宜、祥伝社)

3、『ベルリンは晴れているか』(深緑野分、筑摩書房)

4、『熱帯』(森見登美彦、文藝春秋)

5、『ある男』(平野啓一郎、文藝春秋)

6、『さざなみのよる』(木皿泉、河出書房新社)

7、『愛なき世界』(三浦しをん、中央公論新社)

8、『ひとつむぎの手』(知念実希人、新潮社)

9、『火のないところに煙は』(芦沢央、新潮社)

10、『フーガはユーガ』(伊坂幸太郎、実業之日本社)

※4月15日更新