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東京のモスク、訪ねて知った世界 イスラムへの偏見拭う一冊「モスクへおいでよ」

自著を手にする瀧井宏臣さん

 イスラムは怖い――。そんな偏見を拭おうと東京のモスク(礼拝所)で活動する男性を追った児童向けノンフィクション「モスクへおいでよ」(小峰書店)を、児童文学作家の瀧井宏臣さん(60)が出版した。
 主人公は、モスク「東京ジャーミイ」の広報担当で施設見学の案内役、下山茂さん(70)。瀧井さんは、イスラム過激派による事件のたびに、新聞やテレビの取材に応じる下山さんの姿を見て通い始め、下山さんの様子を記録した。
 本では、見学する小中学生や高校生が礼拝堂の壮麗なステンドグラスや幾何学文様に目をみはる様子などを紹介。自身も信徒の下山さんが、1日5回の礼拝を欠かさないイスラム教徒について説明し、「みなさんは1日に食事を何回しますか。おやつ、夜食も食べたら5回。礼拝と同じですね。食事は体の栄養に、礼拝は心の栄養になるのですよ」と語りかける様子も描かれる。また、神の前では信徒は平等であり、来日したボクシングの元世界王者モハメド・アリやトルコの大統領が礼拝に訪れても特等席があるわけではなく、横並びの信徒の列に入るといったエピソードも盛り込んだ。
 瀧井さんは「この本が、子どもたちがイスラムを知る一歩になればいい。モスクを訪ねた体験はイスラム圏の人々との交流に生きるはずです」と話す。(田中啓介)=朝日新聞2019年2月23日掲載