1. HOME
  2. コラム
  3. 子どもの本棚
  4. 「みてみて!」ほか子どもにおススメの8冊 きらめくいのち、夏に感じて

「みてみて!」ほか子どもにおススメの8冊 きらめくいのち、夏に感じて

 さあ、夏休み。この季節におすすめしたい本を4人が選びました。(☆=新刊、★=既刊、価格は税込み)

☆「みてみて!」(福音館書店)

 そっとつまんだキノコ、指先のテントウムシ、両手ですくったカエルの卵……子どもが自然の中で発見した宝物を「みてみて」と差し出す瞬間をとらえた写真絵本。ページを上にめくる縦開きは、瞬きをするような感覚で画面が目に飛び込んでくる。文は、巻末に書き下ろしの詩が一編あるだけ。小さな手の表情からふわふわ、もぞもぞ、にょろにょろ、肌に触感が蘇(よみがえ)り、心の震えも伝わってくる。自由に会話をふくらませて=3歳から(小西貴士写真、谷川俊太郎ことば、1430円)

★「みんな にげた」(ひかりのくに)

 野原で昆虫をみつけるが、つかまえようとすると、逃げられる。トンボはするり、チョウはひらり、バッタはぴょーん。みんな逃げるのが上手。逃がした後の画面には、なにも描かれず、ただぽっかりと色面だけが広がる。お母さんの姿も見えないが、声が聞こえてきてほっとする。外から見た情景ではなく、幼い子どもの内側からの視界と気持ちが表現されているのだ。1970年初版。今も斬新な赤ちゃん絵本=2歳から(岸田衿子〈えりこ〉文、長新太絵、935円)【絵本評論家 広松由希子さん】

☆「いま、日本は戦争をしている ―太平洋戦争のときの子どもたち―」(小峰書店)

 80年前子どもだった方々に直接お話を聞いて作られたこの本は、単なる戦争体験談にはとどまらないきらめきが詰まっている。悲惨な状況下に置かれても、子どもたちは強(したた)かで愉快で未来を見ている。ああ、友だちになれそう!と思うくらいに生き生きと描かれた17人の子どもたち。その日常が当たり前に続いていくようにしなければ。今しか聞けない貴重な声を全身で受け止め、このような形にしてくれた著者に心から感謝したい=小学校低学年から(堀川理万子 絵と文、4180円)

★「なつのいちにち」(偕成社)

 青い空、白い雲、眩(まぶ)しい海に青臭い緑、風や虫の声。子どもたちの無邪気な一日が鮮やかに描かれ、ページの隅々まで暑い夏の日の感触が詰まっている。ずっとずっと続いてほしい、かけがえのない一日。世界中の子どもたちが、全身で世界を感じ、きらめく時間を夢中になって過ごしてほしい。そんな願いが自然と湧いてくる一冊=3歳から(はたこうしろう作、1100円)【丸善丸の内本店児童書担当 兼森理恵さん】

☆「白さぎ」(のら書店)

 祖母と2人で農場に暮らす少女シルヴィアは野山歩きが大好きだった。ある時、白さぎの巣のありかをさがして若者がやってきた。彼と森の中を歩くのは楽しい時間だったが、シルヴィアは彼に白さぎの場所を教えることはしなかった。それはなぜか――。自然に対する愛情たっぷりのクーニーの美しい絵と石井桃子の名訳が結びついた幻の名作。絵本ではあるが、文章も多いので文学を楽しむつもりで読んでほしい=小学校高学年から(ジュエット作、クーニー絵、石井桃子訳、1980円)

★「タイコたたきの夢」(徳間書店)

 読む人や読むときによって様々な受け止め方ができる物語。むかし、ひとりの男が町の通りをねり歩きタイコをたたいて叫んだ。「ゆこう どこかにあるはずだ もっとよいくに よいくらし」。町の人々は平和を乱すタイコたたきを捕らえようとしたが見つからず、その言葉だけが広がっていった。よりよい国とくらしを求めて旅に出るタイコたたきたちのはてしない欲望に終わりはあるのか=小学校低学年から(ライナー・チムニク作・絵、矢川澄子訳、1540円)【ちいさいおうち書店店長 越高一夫さん】

☆「くるりがもりのおべんとうやさん」(めくるむ)

 タヌキのやまぶきさんとやぐるまさんは、まわりの山や川や畑からとってきた材料でおいしいお弁当を作ろうと腕をふるいます。大工のサルには疲れがとれるように、病院で忙しく働くノウサギにはさっと食べられるものを、汗水たらして道具を作る鍛冶(かじ)屋のイノシシには塩味を利かせて……。多様な仲間の顔を思い浮かべながら、それぞれに合ったものを工夫するって、すてきな仕事ですね。それに、どれもおいしそう=3歳から(ボコヤマクリタ作、1870円)

★「大どろぼうホッツェンプロッツ」(偕成社)

 半世紀以上読みつがれてきたドイツの冒険物語。主人公は少年カスパールとゼッペル。おばあさんから大事なコーヒーミルを盗んだ犯人を追っていった少年たちですが、一人は大どろぼうに、もう一人は大魔法使いに捕まってしまいます。さあ、どうやったら二人は悪党たちをやっつけて、コーヒーミルを取り戻すことができるのでしょうか? 愉快な絵もたくさんついていて楽しめます=小学校中学年から(プロイスラー作、中村浩三訳、1320円、文庫880円)【翻訳家 さくまゆみこさん】