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本で知る哺乳類の不思議な世界 「大哺乳類展2」を読み解く

  1. ダーウィン以来[著]スティーヴン・ジェイ・グールド(浦本昌紀他訳)
  2. 三崎臨海実験所を去来した人たち[著]磯野直秀
  3. 虫の宇宙誌[著]奥本大三郎
  4. もぐらはすごい[著]アヤ井アキコ、[監修]川田伸一郎

 (1)『ダーウィン以来』は、生物学者の故スティーヴン・ジェイ・グールドさんによるエッセー集。進化論から動物の世界の不思議さを語っています。

 「グールドは、アメリカが生んだ偉大な古生物学者です。アメリカの『ナチュラル・ヒストリー』誌での人気連載で一般向けに研究成果を分かりやすく紹介していて、それが一連のエッセー集として出版されています。全部お気に入りの本なのですが、この本は、最初のものとして一冊に選びました。博物館では、面白い動物ネタを紹介していますが、たびたび彼の本からネタを頂戴しています。たとえば、走るなら車輪があるほうが有利ですが、なぜ車輪を持つ動物はいないのか。生き物の進化の過程では、骨格を変化させることが難しいからです。今回の展示にも、そういう彼のエッセンスが生きています。グールドは生物学の歴史にも明るい人で、僕が現在行っている博物学史的な研究にも影響を与えています」

チーター
チーター

 (2)の三崎臨海実験所は東大の付属機関で、三浦半島先端にある生物学の世界的な研究拠点。1886(明治19)年の設立以来、国内外から研究者が訪れてきました。

 「2冊目は歴史の本です。明治時代に『お雇い外国人』が日本人をどう教え、その日本人が動物学を築いていく過程やこの実験所で活躍した日本人研究者やそれをサポートした人々のことについてもよく調べられている本です。なかでも、僕が1番好きなのは、イギリス出身の貿易商アラン・オーストン。希少な深海ザメとして有名なミツクリザメなど、日本の自然を紹介する仲立ちをしたエピソードなどが紹介されています。日本の動物学史を知るうえで欠かせない本です」

 (3)の著者、奥本大三郎さんは昆虫好きのフランス文学者で、ファーブル昆虫記の翻訳者としても知られています。

 「僕も虫が大好きで、小学校5・6年生の頃、母親にせがんで買ってもらった思い出の本です。今読んでも面白い、僕を作った本の一つです。2000年ごろ、台湾でモグラの新種を発見したことをきっかけに、台湾でどういう人たちが生き物を調べたのか、興味を持ったのですが、たまたまこの本を読み返したら、戦前の昆虫学者・鹿野忠雄のことが書かれていてびっくりしました.鹿野は僕が見つけた台湾のモグラのことを、1930年代にすでに気づいていた人なんです。小学生の頃にこんな本を買っていたなんて、本当に驚きです。余談ですが、この本で『Y氏』として登場する方が寄贈した標本の中に、大変貴重なヤマビーバーの頭骨が入っていましたので、今回の展覧会でも紹介しています。この本と僕の縁は深いです」

アズマモグラ
アズマモグラ

 (4)は、モグラの生態を、かわいらしい絵と分かりやすい文章で紹介した絵本です。今年2月には「日本絵本賞大賞」を受賞しました。

 「意外と知られていないモグラの生活が五分で分かる本だと思います。絵を描いたアヤ井さんのために、僕がモグラをつかまえて触らせてあげました。その感触を知ってもらったからこそ、イメージも具体的にわいたのだそうです。モグラの生態は未解明な部分も多いですが、僕が長年、モグラと付き合ってきた経験から推測するモグラ像が表現されています。モグラは太陽の光に当たると死ぬという俗説がありますが、彼らが地上に姿を現すのは1回だけ。だからモグラたたきはできませんよ(笑)。そういう解説もつけています」

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