【三島賞】三国美千子「いかれころ」(「新潮」2018年11月号)
三国さんは1978年大阪府生まれ。受賞作は2018年に新潮新人賞を受けたデビュー作。昭和後期の大阪・河内地方を舞台に、因習にとらわれた一族を4歳の「私」の視点から描く。濃密な共同体が内包する差別のまなざしが方言の強い会話文から浮き上がってくる。
>「いかれころ」を取り上げた磯﨑憲一郎さんの「文芸時評」はこちら
【山本賞】朝倉かすみ「平場の月」(光文社)
朝倉さんは、北海道小樽市生まれ。2003年「コマドリさんのこと」で北海道新聞文学賞、09年に「田村はまだか」で吉川英治文学新人賞を受賞した。
受賞作は50歳を過ぎた男女の切ない恋愛を描いた長編。かつて告白して断られた中学時代の同級生と再会するが、彼女にがんが見つかる。若くはない2人の揺れ動く心情を繊細な筆致でとらえた。
他の三島賞候補作はこちら
・倉数茂「名もなき王国」(ポプラ社)
・岸政彦「図書室」(「新潮」2018年12月号)
・金子薫「壺中に天あり獣あり」(講談社)
・宮下遼「青痣」(「群像」2019年3月号)
>宮下遼さんが翻訳したオルハン・パムク「無垢の博物館」の書評はこちら
他の山本賞候補作はこちら
・芦沢央「火のないところに煙は」(新潮社)
・赤松利市「鯖」(徳間書店)
・木皿泉「カゲロボ」(新潮社)
・澤田瞳子「落花」(中央公論新社)