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日本酒大好きOL松子の恋! はるこ「酒と恋には酔って然るべき」(第101回)

 去りゆく「平成」と新元号「令和」に乾杯! というわけで、今回は“日本酒マンガ”。日本酒というと「オヤジの酒」のイメージで、ワインのようにオシャレな酒ではなかった。ところが最近、若い女性の間で日本酒の人気が急上昇しているらしい。日本酒専門ウェブメディアSAKETIMESの調査によると、「週に4日以上日本酒を飲む」人は2017年の35%から2019年は29%に下がっている。そんな中、「30代女性」に絞ると11%から17%に、「20代女性」は8%から16%に倍増しているのだ!

 日本酒マンガといえば、1988年から1991年まで「モーニング」(講談社)で連載され、和久井映見主演でテレビドラマ化もされた『夏子の酒』(尾瀬あきら)が真っ先に頭に浮かぶ。新潟の酒蔵の家に生まれた佐伯夏子は東京でコピーライターをしていたが、夭折した兄の遺志を継いで幻の酒米・龍錦(たつにしき)で「日本一の吟醸酒」を造ろうと奮闘する。バブル期の農業が抱えていたさまざまな問題も取り上げた社会派の作品でもあり、80年代の日本酒ブームを加速させた。主人公の夏子は20代の女性だったが、男性誌で連載されたこともあり、女性読者は少なかったように思う。少なくとも『夏子の酒』の影響で日本酒を飲む女性が増えた、という話は聞かなかった。

 ところが平成末期の現在、日本酒好きの女性も増えている。彼女たちに大好評なのが、昨年から「エレガンスイブ」(秋田書店)で連載されている『酒と恋には酔って然(しか)るべき』(はるこ)という作品だ。
 32歳のOL・藤井松子は日本酒に目がなく、家では毎日のようにカップ酒を愛飲している。それなりに楽しい日々を過ごしているが、友人たちが次々と結婚していく中、じわじわと焦りも感じていた。そんな松子が気になっている男性は、普段はクールだけど酔うと可愛い会社の後輩・今泉。ふたりの距離が縮まりそうで縮まらない中、最新第2巻では松子と同じく幻の銘酒「新政№6X(エックス)タイプ」に感涙する伊達とも出会って――。

 松子の地元・会津の「ゆめごころカップ」をはじめ、山口の「五橋純米桃色にごり」、新潟の「越乃景虎梅酒」、広島の「千福夏にごり」、高知の「船中八策ひやおろし」など、毎回知る人ぞ知る銘酒が次々と登場。変わったところでは、カルディと花の舞酒造がコラボしたオシャレなカップ酒「唐猫様トンボ」も紹介される。「温度別のお燗の呼び名」「立春朝搾(しぼ)り」「醸造アルコール添加」など、日本酒に関するウンチクも本格的で、自然と知識が増えていく。ただのウンチクマンガではなく、アラサー女性のラブストーリーとして完成度が高いのも大きな魅力だろう。年下で不思議ちゃんの今泉と年上で欠点が見当たらない伊達。はたして松子がどちらを選ぶのか、日本酒が好きなだけのオジサンが読んでも引き込まれてしまうのだった!