「牡丹灯籠(ぼたんどうろう)」や「東海道四谷怪談」といった江戸期以降の怪談と、千年の都・京都のつながりをたどり、ゆかりの場所を訪ね歩く。今夏に出した新刊「京都怪談巡礼」(淡交社)は、京都にまつわる怪談文芸フィールドワークの集大成だ。
カランコロンという駒下駄(こまげた)の音で有名な牡丹灯籠は、明治時代の落語家・三遊亭圓朝(えんちょう)が創作した怪談噺(ばなし)。だが、元をたどれば中国の小説で、それを日本で初めて紹介したのが京都にある東寺の塔頭(たっちゅう)・宝菩提院(ほうぼだいいん)だった。たんなる日本語訳から、やがて舞台を京都に移した翻案も登場。「江戸初期の出版社は京都が中心。京都ネタが多いのも道理なんです」
また、その逆もある。四谷怪談といえば江戸歌舞伎の代表格だが、なぜか京都・六道珍皇寺(ちんのうじ)の境内に「お岩大明神」が祀(まつ)られている。「和尚さんに取材して、初めてわかったんです。私も驚きました」
だから、現場にこだわる。「書物だけでは雰囲気や匂いはわからない。そこに行かないと本質はつかめないと思います」(山崎聡)=朝日新聞2019年8月1日掲載
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