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『魔法の庭ものがたり』あんびるやすこさんインタビュー 「自分で自分にかけるハッピーになれる魔法」があることを見つけてほしい

 会場の入り口では『なんでも魔女商会』に登場する召使いのネコ「コットン」がお出迎え。その向かいでは、期間中、会場限定で販売されているオリジナルグッズ売り場があり、かわいらしいイラストがあしらわれたマスキングテープやクリアファイルなどのほか、作品をイメージしたアロマスプレーなど、見ているだけできもちが上がる商品が並んでいる。

 先へと進むと、鮮やかな色使いが印象的な各シリーズの原画がずらり。約100点の原画、制作の過程がうかがえるスケッチなどのほかに、あんびるさんが玩具デザイナー時代に描いた貴重なデザイン画も展示されている。

 また一角には作品の世界を再現した展示があったり、フォトスポットも充実していたりと、作品の世界に入り込める展示になっている。

 取材日にはトークショーとサイン会が行われた。夏休み期間ということもあり、新潟県や兵庫県など、遠方から来場した家族も多くみられた。

魔法の庭のピアノレッスン 表紙カラーラフ

──本展の見どころはどこでしょう?

 私は手書きの絵に直で彩色しているので、原画ではちょっと色がはみ出ていたり、ホワイトで修正していたりするところもわかります。「生の絵ってこうなんだな」と感じていただければと思います。あとは、印刷ではなかなか出ない色というのがあって、例えばピンクや紫は原画の通りの色にならないんです。本と原画とを見比べて「こんな風に違うんだな」と色の違いに注目するのも面白いと思います。

──今日のお洋服とお花のコサージュもすごく華やかな色で素敵です

 子どもたちと接する時間は、すべてが子どもたちへのプレゼントだと考えています。読者と一緒に写真を撮る時はその一枚が特別な写真になってほしいと思い、大きなお花のコサージュを胸のあたりにつけるようにしています。コサージュって普通につけるとお花が下を向いてしまうでしょう。いつもお花が上を向くように、実はマグネットで押さえているんですよ (笑)

──女の子やお母さんたちが目をキラキラさせて展示を見ていたのが印象的でした。あんびるさんの作品は、ジュエリーやドレス、お菓子作りなど、女の子が大好きなものがたくさん詰まっていますが、どうしてこんなにも女子が喜ぶものが思い浮かぶのでしょう?

 私は以前「セーラームーン」や「レイアース」という、女の子が主人公のアニメの玩具開発をしていたんです。その時は女の子が嗜好するものについてデータ分析した結果に基づいた開発をしていたので、その経験が自分の中にずっと入っているのかなと思います。

──子どもたちに強く支持されていることについて、ご自身ではどうお考えですか?

 玩具って親はなるべく子どもに与えたくないものだけど、子どもたちは欲しいもの。ともすると「欲しい」と「与えたくない」のせめぎ合いみたいな商品になってしまうのだけど、私は両方に「欲しい」と思ってもらえるものを作りたいと思っていたんです。児童書はその夢を実現するのにぴったりでした。子どもたちが自分の意志で買いたいと思ってくれる作品を作りたいと描き続けてきたので、その気持ちが伝わったのかなと嬉しく思っています。

──サインをもらう列の中に、お子さんと同じくらい嬉しそうなお母さんたちの姿も多く見かけました。母親世代の読者にも反響があることについてはいかがですか?

 嬉しいです。よく児童書って世代を超えたカテゴリーと言われますが、自分が子どもの頃に読んだ本を我が子に読ませるのではなく「いまの自分」が楽しんで読んでいる作品を、お子さんと一緒に楽しんでくれているなと感じます。

──『魔法の庭ものがたり』シリーズには毎回、大人が読んでいてもハッとするようなメッセージが込められています。私も、その時の自分の気持ちや状況にあわせて読みたい言葉が書いてある巻を選んで読んでいます。たとえば仕事でくじけそうになったときは、21巻『うらない師ルーナと三人の魔女』に出てくる「あしたは、きょうよりできることがふえていて、かしこくなってる。だからあしたは、ぜったいにきょうよりいい日になるんだよ。」というセリフ。手帖にも書きとめました。

 とても嬉しい読み方ですね。私がいつも願っていることは「夢を諦めないでほしい」ということ。夢を叶えるために遠回りしたり、不十分であったりしても、夢を持ち続ける気持ちは大人になっても忘れないでほしいという気持ちを作品に込めています。あとは、日常生活を豊かに送ってほしいということも作品で大事にしていることです。私にとっては、それがアロマを焚いたり手芸をしている時間なのですが、みなさんにも自分の日常を豊かにする何かを見つけて、毎日を楽しんでほしいと思います。

──ご自身が日々の生活を大切に過ごされる中で心がけていることはありますか?

 いまは本当に休みがないので、自分を満足させる時間を日常生活の中で作るようにしています。例えば、ゆっくりお茶を淹れて味わうことや、美味しいチョコレートを買って食べようというようなこともその一つです。あとは、アロマを焚いてリラックスする時間も大切ですね。これで私の日常が豊かになるなと思うことは、楽しむようにしています。

──あんびるさんの各シリーズに共通しているのが、主人公がそれぞれ職業を持ち、自立心のある女の子だということです。先ほどのトークイベントでは「世の中や人の役に立ちたいと願う女の子を描きたい」とおっしゃっていました。本シリーズの主人公・ジャレットも「誰かの役に立ちたい」と、「魔法の庭」で育てたハーブを使った「お薬」を作ります。

 子どもの頃『赤毛のアン』が好きだったんです。アンは自分の周りにいる人を幸せにして、そして自分も幸せになっていきますよね。私自身も「何か世の中の役に立ちたい」ということはいつも思っていますが、そこまで大きなことではなくても、自分の隣にいる人に親切にすることで自分も幸せになるという世界を描いていきたいです。

──主人公以外のキャラクターも毎回物語に彩りを添えています。ジャレットの友人で、ちょっと勝気なスーや心優しいエイプリルに、個性豊かな6匹の子ネコたち。この魅力的なキャラクターは、どのように生み出されていらっしゃるのでしょうか?

 いつも登場人物を考えるときは、この子は何が得意なのかより、どんなことが苦手で何ができないのかを先に考えるようにしているんです。その子にとっての苦手なことが、逆にこれから成長していく力になるようなお話にしたいと思っています。ですので、まずはそれぞれの欠点を決めてから、主人公と周囲のキャラクターを作っていくというやり方をしています。

会場で販売されている各シリーズのマスキングテープ

──『魔法の庭』には、ジャレットがハーブを使って作る「お薬」を求めて、色々な悩みを持ったお客様がやって来ます。特に恋愛関係のお悩みも多いですね。それぞれの悩みはどのように決めていらっしゃるのですか?

 私は子どもと大人の悩みが違うものだとは考えていません。子どもたちは「きっと大人になれば悩みがなくなる」と思っているかもしれないけど、実際はそんなことはなくて、大人になっても同じように悩んでいるんですよね。子どもたちが悩みに向き合った時に「こんなことで悩んでいる時はこういう風に考えると、自分の中でその悩みが軽くなるよ」とか「こんな考え方をするとハッピーになるよ」という物事のとらえ方を、作品を読んだ時にすっと心に入っていく形で書けたらと思っています。

──サイン会で、最後に一人ずつ「握手しよう」と声をかけられていたのが印象的でした。

 憧れの気持ちってとても大切だと思うんです。その気持ちが自分を磨いてくれるし、幸せにもしてくれるから、私の前に来てくれた時だけでも、憧れの気持ちを最大限に楽しんでもらえるようにと、握手をしています。それが子どもたちにとってよい思い出になれば嬉しいですね。

──多感な時期の子どもたちと接する仕事をするということは、そういった細やかな心配りや覚悟のいることなんですね。作品を作る上で、一番励みになることは何ですか?

 保護者から「先生の本で初めて子どもが読了することができて、読書が好きになりました」と言ってもらうことでしょうか。私の作品を読了できたことで、その子は読書習慣が身につき、本を読む喜びを知ることができる。「その子に『役に立つこと』が私にできた」って思えるんです。
子どもたちが読書習慣を身につけることは本当に大切だと思います。いま、読み聞かせは盛んに行なわれていてとても良いことなのですが、その反動で一人読みに移行できないお子さんも多く、最後まで読みきれないという悩みを持っている人が多いです。ですので、私は「読了できる」ということにも常に注意を払って作品を書いています。

──子どもたちに、どんな大人になってほしいと思いますか?

 作品の中で、他者理解について書いていることが多いです。人のことを知ろうとすること、そして、自分と違う一面を持っていたとしても、そこを認め合い他者を理解することができる大人に成長してほしいですね。それから、本という空想の世界で得られるものとは別に、実生活でも豊かな生活体験をして欲しいと思っています。それぞれの作品で、物語に登場するものが実際に作れるレシピも巻末に載せているのですが、ご家庭で作ってみてくれるお子さんが多いです。豊かな生活体験を子どものころからしていることが、大人になる成長過程においてとても大切なことだと思っています。

──新刊である23巻『100年ハチミツのあべこべ魔法』の見どころはどんなところでしょう?

 今回は二つのテーマがあります。一つは「悪いことが起きても、角度を変えて考えてみるとそんなに悪いことではない。何でも楽しんでハッピーになろう」ということ。もう一つは、私自身も気に入っているのですが「人を変えるには、まず自分が変わらなくてはならない」ということです。勇気を持って自分を変えることで、人とつながっていけることが今回の一番のテーマになっています。ぜひ本作をお読みになって、みなさんにも「自分で自分にかけるハッピーになれる魔法」があることを見つけてほしいと思います。