「NETFLIX」書評 映像メディアの巨人の黎明期
評者: 石川尚文
/ 朝⽇新聞掲載:2019年08月24日

NETFLIXコンテンツ帝国の野望 GAFAを超える最強IT企業
著者:牧野洋
出版社:新潮社
ジャンル:IT産業
ISBN: 9784105071219
発売⽇: 2019/06/26
サイズ: 20cm/382p
NETFLIX コンテンツ帝国の野望 [著]ジーナ・キーティング
映像メディアの世界で巨大な存在になったネットフリックス。フェイスブックやグーグルと並び、FANGと呼ばれるIT大手の一角を占める。その黎明期を描いたのが本書である。
最近では潤沢な資金を背景に、作り込んだコンテンツを投入することで知られるネットフリックスだが、出発点はDVDの郵送レンタル。全米に店舗網を持つレンタルビデオチェーンと繰り広げた激闘を軸に、驚くほど泥臭い生き残りのための競争が、具体的エピソード満載で描き出される。
武器の一つは、視聴履歴から次に薦める作品を選び出すアルゴリズムへの注力だった。データを牛耳ることによる覇権は、他の巨大IT企業と共通する。ネット配信の時代を見通し、業態を切り替えたのも果断だった。新たな競争に勝つために乗り出したコンテンツへの投資が今につながる。
原著は7年前の刊行だが、日本ではあまり知られていない〝原点〟だけに、いま読んで興味深い。