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「テレビ最終戦争」 放送業界を追い込む新興のうねり

『テレビ最終戦争 世界のメディア界で何が起こっているか』 [著]大原通郎

 米テレビ界最高の栄誉であるエミー賞で、ネット動画配信のネットフリックスが、他社をしのぐ今年最多の112作品でノミネートを受けた。今や世界のメディアビジネスの覇権は、ハリウッド大手スタジオやテレビ局といった旧勢力から、ITを駆使する新興勢力に移りつつあるのだ。
 本書の表現を借りれば「世界のメディアは、FANGというモンスターの攻勢に飲み込まれようとしている」。FANGとは、映像ビジネスに参入したフェイスブック、アマゾン、ネットフリックス、グーグルの略。さらにアップルや、巨額でJリーグの放映権を獲得した英パフォームの台頭も見逃せない。
 このうねりは日本にも押し寄せ、視聴率低迷、業績不振にあえぐ放送業界を崖っぷちに追い込んでいるという。
 本書では、桁違いの制作費を投じて良質のコンテンツを生み出すFANGの戦略やその野望を詳解。テレビ局の試行錯誤やアベマTVの奮闘など日本の現状にも言及する。
 合併や再編を繰り返す米メディアの動向が整理されていて読みやすいが、業界に精通する向きには既知の内容かも。五輪で注目されるここ数年がラストチャンスと、日本の起死回生策も提示する。=朝日新聞2018年8月18日掲載