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「ざんねんないきもの事典」シリーズ累計350万部突破 〝進化〟の結果に共感広がる

高橋書店の編集者、山下利奈さん

 たまにコブがしおれるラクダ、太りすぎて飛べなくなったカカポ……。様々な生き物たちの、拍子抜けするあれこれを紹介する『ざんねんないきもの事典』シリーズ(高橋書店)が売れている。今年6月に4冊目が発売され、累計で350万部を突破した。書籍編集部の山下利奈さん(33)は、「巻を重ねるごとにファンが増えている実感がある」と話す。

 高橋書店は『すごい動物大図鑑』という本も出版している。正反対の「ざんねん」というキーワードが出てきたのは、生き物の情報を集める中でのことだった。「よくよく調べていくと、ちょっとざんねんだなと思える面があるのに気づいた」と山下さん。

 読者から届くアンケートはがきは4歳から95歳まで幅広い。「一昔前だったらお叱りを受けた題名かもしれない。でも、いまは『ざんねん』という言葉に対する解釈が広がった」とヒットの理由を話す。とくに若い世代が使う「ざんねん」はネガティブな意味合いにとどまらず、愛がこもっているという。「友達に愛情をこめて使ったりする。時流の変化にうまくはまったと思う」

 ネタ探しで図書館にこもったり、ネットニュースを読みあさったり。動物園や水族館に直接出向き、解説を参考にすることもある。4冊目に収録した約100種は、800の候補から絞り込んだ。事実は変えないように、でも子どもたちにも伝わりやすいように、原稿は何度も修正する。

 動物学者の今泉忠明さんが監修し、生き物たちの意外な一面を紹介するだけではなく、「進化」という、各巻に通底するテーマが生まれた。4冊目では、ダーウィンの進化論を環境の変化と突然変異という二つの要素から解説する。

 山下さんは言う。「私たちが断片的に持っていた生き物にまつわる情報は、じつは進化の結果。進化は、パワーアップのイメージが強いけれど、専門家からすると全く違う。そこが生き物たちのすごいところで、かわいらしく、共感できるところだと思う」(興野優平)=朝日新聞2019年8月31日掲載