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山岳寺院がテーマの企画展 長野県の2館、出土品など展示

長野県千曲市扇平出土の密教法具=千曲市森将軍塚古墳館

 古くから仏教が伝わり、多くの山岳寺院が営まれた長野県。そんな山辺の寺々をテーマにした企画展が同県北部の2館で開催中だ。

 千曲市の市森将軍塚古墳館で開かれているのが「さらしな はにしな 寺(てら) 仏(ほとけ)」(29日まで)。かつて更級(さらしな)・埴科(はにしな)の2郡があった千曲市では、一地域としてはかなりの数にのぼる、経典を納めた経塚などが確認されている。しかし、それらの出土品がまとまって紹介される機会はなかった。

 今回はそれらを総ざらえし、古代以降の同地の仏教文化を追いかける。

 冠着山(かむりきやま)の中腹にあたる扇平から出土した密教法具(平安時代、12世紀、明徳寺蔵)は保存状態が極めて良好。経塚からの出土遺物や、明治時代以来行方不明だったが最近再発見された「板碑」(供養塔の一種)などの珍しい遺物も。

 一方、長野市立博物館の「神と仏が宿る里」(11月17日まで、10月16日から展示品一部入れ替え)は、更級・埴科・小県(ちいさがた)・筑摩・高井の5郡の山寺を中心に、「神」と「仏」が交感する仏教信仰を概観する。

 この地には戸隠信仰をはじめとして、神と仏を一体のものとみる「神仏習合信仰」が特に色濃く残る。

 展示では雨乞いの祈祷(きとう)と関わる「蔵王権現立像(りゅうぞう)」(平安時代、12世紀、松本市牛伏寺蔵)や、東京国立博物館から里帰りした「北日名経塚出土品」(平安時代、12世紀、坂城町出土)、「長谷寺経塚出土品」(同、長野市出土)などの貴重な品々から、地域ごとの仏教のあり方を考える。 (編集委員・宮代栄一)=朝日新聞2019年9月25日掲載