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『「黒い羽根」の戦後史』書評 石炭産業の負の歴史

評者: 斎藤美奈子 / 朝⽇新聞掲載:2019年11月09日
「黒い羽根」の戦後史 炭鉱合理化政策と失業問題 著者:藤野 豊 出版社:六花出版 ジャンル:社会・時事

ISBN: 9784866170794
発売⽇:
サイズ: 22cm/374p

1940年代末、多くの労働者が失業し、貧困と人身売買の温床となった炭鉱地帯。「炭鉱離職者臨時措置法」成立までの15年間を踏査し、炭鉱を犠牲にした高度経済成長を検証する。ジ…

「黒い羽根」の戦後史 炭鉱合理化政策と失業問題 [著]藤野豊

 1950年代半ば、炭鉱合理化政策に石油や石炭の輸入が加わり、石炭産業は深刻な不況に陥った。ことに中小炭鉱が多かった筑豊では廃山による失業者が続出。生活の困窮から不就学児童が急増し、少女の身売りまでが横行した。当時の政府は十分な失業対策を講じたのだろうか。
 50年代~60年代の歴史といえば、思い出すのは高度経済成長、安保闘争、三池闘争……。だがその陰には組合にも属さない大量の失業者と家族がいた。
 「黒い羽根」運動とは赤い羽根運動を模し、筑豊の炭鉱失業者家庭を救う目的で59年9月からはじまった募金活動のこと。安本末子『にあんちゃん』や土門拳『筑豊のこどもたち』が注目されたのも同じ頃。炭鉱失業者に世間は大きな関心と同情を寄せたのだ。
 三池炭鉱の遺構が世界遺産の一部になるなど、炭鉱が観光資源と化しつつある昨今。ならば負の歴史も忘れんなよ! そんな声が本の隅々から響いてくる。