隣国でありながら、国交が結ばれなかったことなどから、私たちにはあまりなじみがない朝鮮半島の高麗(918~1392)。その日本との関わりをわずかな史料群から解き明かす『日本高麗関係史』(八木書店)が出版された。
著者の近藤剛さんは1980年生まれ。卒業論文で日本と高麗の関係史をとりあげて以来、韓国の大学に留学するなどして調査を続けてきた。現在は開成中学校・高等学校教諭として日本史などを教える。「当初は半世紀以上前の論文が基本文献になっているほど、研究が停滞していた」と振り返る。
史料が少ないことや高麗の存続期間が日本の古代~中世にまたがるため、国内の研究者が交渉史を通史的にとらえにくい、などのデメリットが重なった結果らしい。
それでも現地の研究を網羅し、基本文献を再整理し、史料を細かく比較することで、本書は日本と高麗の関係や高麗史そのものに新視点を提示することに成功した。
日本と高麗は国交がないにもかかわらず、高麗はしばしば接点を持とうとした。承暦4(1080)年には国王の病を治すため、日本の朝廷に医師の派遣を依頼。また、嘉禄3(1227)年には倭寇の禁圧を求め、使節を九州の大宰府に送った。近藤さんは新史料発見などを通じ、従来1度と考えられてきた嘉禄3年の来航が実は2度だったことなどを明らかにした。
厳しい国際環境にあっても、隣りあう国々はまったく無関係ではいられない。それを今考える意味でも、注目すべき1冊といえる。(編集委員・宮代栄一)=朝日新聞2019年11月20日掲載