今年の文芸賞(河出書房新社主催)は、宇佐見りんさん(20)の「かか」と、遠野遥さん(28)の「改良」。ともにジェンダーをテーマにし、「ここ10~20年たくさん書かれてきたテーマだが、この2作は今をすくい取っている」(選考委員の斎藤美奈子さん)と評された。
「かか」とは母のこと。父と離婚後、酒を飲み、暴れる母を19歳の主人公は受け入れきれない。女を生きる悔しさが独特の言葉遣いで描かれる。宇佐見さんは大学1年生。受賞会見では「周りと話しているとき、ついていけなくて焦りを感じることがある。そんな自分のついていけなさを書くことが、自分にとっては一番リアルだった」と話した。
「改良」は、メイクや女装で美しい外見を目指す青年が主人公。美しさへの渇望と性をめぐる暴力が乾いた文体でつづられる。遠野さんは6~7年前から新人賞への応募を続けていたが、今作で初めてジェンダーを扱ったという。休日のすべてを執筆にあてる。「他にやりたいこともなくて、人と会って遊ぶより、一人で地道に小説を書いているほうが面白がって取り組めます」(中村真理子)=朝日新聞2019年11月27日掲載