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日本語とドイツ語を行き来「実験性こそ創作の源」 多和田葉子さん、都内で朗読会

 ドイツ・ベルリン在住の作家、多和田葉子さんが来日し、東京都内の「ゲーテ・インスティトゥート東京」で朗読会を開いた。日本語とドイツ語の双方で創作する作家ならではの催しだった。

 多和田さんは、日本語とドイツ語が交互に入れ替わるエッセーを朗読。日本語で話した内容をドイツ語で繰り返しているようにも聞こえるが、内容が少しずつずれていく。「訳しながら好きなことを話してしまう、駄目な翻訳家」というコンセプトだと明かした。

 質疑応答では、参加者から「2言語の間で生きるのは疲れないか」と聞かれ、日常会話では問題ないとしながら「日本語で原稿を書くと、きちんと書かなければという意識が活性化して、ドイツ語に戻ったときに子供のようなみずみずしいドイツ語の感覚を取り戻すのが難しい」と答えた。

 自作を翻訳家ではなく、自分で訳すこともある。その際は「2言語とも壊れていく」のだという。だが、その実験性こそが創作の源になっている、と語った。(板垣麻衣子)=朝日新聞2019年12月4日掲載