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絵本「くろは おうさま」 見えない世界で感じる「色」は

 目の見えない子どもが感じている「色」の世界を描いたメキシコの絵本「くろは おうさま」が翻訳出版された。

 真っ黒なページに、透明な樹脂インクで描かれたイチゴや葉っぱ。触って楽しめるイラストの傍らには、盲目の主人公トマスが音や匂い、さわり心地といった視覚以外の感覚を研ぎ澄ませて色をとらえている様子がつづられている。例えば青はこうだ。

 あおはそら。たこをあげていると、ひざしであたまがあつくなるときのそら。
 出版したのはネットで資金を募って世界の本を翻訳出版するサウザンブックス社(東京都)。原書は14年前にメキシコで出版され、ボローニャ国際児童図書展で優れた児童書に贈られるラガッツィ賞を受賞した。ただ、日本ではインクや点字化のコストが敬遠され、翻訳されていなかった。

 原書の読者が「子どもたちが豊かさの意味を考える機会に」と資金を募ると3カ月で約400万円が集まり、昨年11月の一般発売にこぎ着けた。同社の古賀一孝代表は「絵本の美しさに加え、目の見えない人がどのように世界を認識しているかという想像をかき立てる作品であることも多様性を重んじるこの時代に支持を得た」とみる。

 同社は日本語で読みたい海外の出版物の推薦を受け付けている。問い合わせは同社(03・6276・6688)。(伊藤舞虹)=朝日新聞2020年1月25日掲載