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「可愛い戦争から離脱します」 整形を繰り返した、整形アイドル轟ちゃんが今思うこと

文:五月女菜穂、写真:篠塚ようこ

思い出したくないことほど書かなくてはと思いました

――『可愛い戦争から離脱します』は、まだ整形する前のご自分に読ませたい本というテーマで書かれたということですが、改めて本を書かれた理由や思いを聞かせてください。

 私は普段、YouTuberとして活動をさせていただいているのですが、本でしか伝えられないことがあるなと思ったからです。動画という表現は、どうしてもエンターテイメント要素が強くて、みんな“面白い轟ちゃん”を求めていると思うんです。だから、自分のまっすぐな気持ちを伝えようとすると、どうしても否定的に捉えられがち。特に美醜に関することはすごくデリケートなことなので、みんながバリアを張った状態で見るだろうなと思ったんですね。

 見たい人が見たいときに見られるものを書きたい。それが本を書いたきっかけです。思い出したくないことほど読む人には刺さるのかなと思って、深夜、一人で沈んでいる時に書きました。病んでいて、打ち合わせの時には「目が死んでいる」と(事務所の)社員さんに言われて、気晴らしに散歩に行こうと言っていただいたりして。たぶん書くことに没頭していたんだと思います。自分があの時どんな言葉をかけられたら救われただろうか、そんなことを考えながら、そのアンサーを書きました。

――タイトルもご自身で考えられたそうですね。

 はい、5時間かかりました(笑)。かわいい、とか、かわいくないという美醜で人の評価がなんとなく決まることを、普通のこととしてみんなが受け入れているじゃないですか。そんな世の中がおかしいと思って。このヘンテコな世の中を表すいい単語ないかなと思ったときに、ポップで、サブカル的な要素を取り入れつつ、でも、ぐさっと刺さる「可愛い戦争」という言葉が浮かびました。

――本が完成して、率直にどう思われていますか。反響はありましたか。

 動画で私のことを知ってくれている人はもちろん、私のことを知らない人や、ターゲットとして想定していなかった男性も本を手にとって読んでくださっているように感じます。「可愛い戦争というワードがいいですね」とか「モヤモヤしていたことが腑に落ちました」というご意見をいただくことが多くて、嬉しかったです。

 それこそ、私が一番やりたかったことだったし、伝えたいということが伝わったから。「可愛い戦争」というモヤモヤっとした世の中をみんなが意識し始めた。時代を変えるといったら大げさかもしれませんけど、そこに気づくことが、みんなが苦しくなくなるコツなのかなと思うので。

普通の子と同じように生きたかった

――轟ちゃんのことを改めて伺いたいのですが、整形をしたのが18歳の頃ですね。自分の中で、顔に違和感を覚えたのは何がきっかけだったのですか。

 中学2年生の時のことです。当時私はいじめに遭っていました。クラスの全員から無視されたり、ばい菌扱いされたり、陰湿な嫌がらせをされるようになりました。廊下で「ブス」と暴言を吐かれることは日常茶飯事でした。

 修学旅行の時に撮られた写真の中に、いじめの主犯格グループの男子の一人とツーショットになっている写真があって。赤いジャージ姿で、振り向きざまに撮られた不意打ちの表情です。ハーフアップでストレートの黒髮。目は細くほとんど開いていなくて、前歯2本が大きく傾いた口元が半開きになっていた写真でした。その写真を見た時に、あ、自分って本当にブスなんだと分かってしまったんです。

 整形したきっかけをいじめというと簡単なのですが、厳密にいうと、少し違うんです。いじめは引き金にすぎず、整形をしたのは被害妄想で自分を否定し続け、劣等感を積み重ねた結果だということです。

――そこから、可愛くなりたい、顔を変えたいと思うようになったわけですね。

 可愛くなりたいというよりは、普通になりたいという感じですね。普通の周りのかわいい女の子と同じように生きたいという思いが芽生え始めた感じですね。

――初めて整形をした時はどういう気持ちだったのですか?

 お金も整形のために貯めていたし、変えたいという思いが蓄積されて、なるべくしてなったという感じですね。これだけはしないと人生変わらないだろうと何年も思っていたし、当時、整形は魔法のようなものだと思っていたので、整形をやったら、買い物もできて、コスメカウンターにも行けて、好きな服を着られると思い込んでいました。

 最初は嬉しかったです。瞼に線ができたので、アイシャドウを塗れるし、アイラインを引いても隠れない。整形した直後が一番嬉しいですよ。腫れがひくまでの間が一番嬉しい。直後は、腫れがひいたら、何をしようと妄想して、一番美意識が上がる。

 でもしばらくしたら、変わらない日常がそこにはありました。ただのブスな私に線ができたという事実だけが残った。いっときの快楽でした。

「整形が武器になるかも」とYouTuberに

――本にも書かれていますが、整形を一度したことによって他のコンプレックスが可視化されて、ほぼ毎年、整形手術を受けていますよね。18歳で目を部分切開して、20歳の時に鼻と口、21歳にフェイスライン、22歳に頬とあご下の脂肪吸引、23歳に200万円をかけて鼻、24歳の時に歯の裏側と目の埋没を直されて、25歳の時にプチ整形でヒアルロン酸を入れたり、目の切開とタレ目の整形、26歳が顎と目という。ご自身の中でそれぞれ思いはあると思うのですが、どこの手術が一番印象的ですか?

 やっぱり鼻ですね。1回目の鼻整形で失敗してしまったので、2回しました。もともと想定していた金額が100万円以下だったのに、200万円もかかってしまい、整形で借金は膨らみましたが、今は一番気に入っているパーツです。

――大学を卒業して就職されたんですが、なぜYouTuberになろうと思われたのですか?

 YouTuberという選択肢が浮かんだのは2回目の鼻の整形をする少し前のことでした。YouTubeを見ていて、当時、私の知る限り「整形YouTuber」はいませんでしたし、整形がもしかして武器になるのかなと思ったんです。

 ダウンタイム(整形手術後の腫れやむくみで日常行動が制限されること)は暇でやることがないし、整形の情報を交換したり、コメントのやり取りをしたりして、誰かとコミュニケーションとれる場がほしかったし、ちょっと借金返済の足しになるかもという嫌らしい気持ちもあって、深く考えず、動画を投稿し始めました。

 チャンネル登録者数が3000人を超えたあたりから、YouTuberを名乗るようになりましたが、それまでは、素人が友達づくりのために掲示板に書き込むぐらいの感覚でした。

私の顔とあなたの美醜は関係ない

――動画を公開することで、人気者になる一方、否定的なコメントもあったわけですが、それはご自身でも想定はされていたのですか?

 もちろん想定していました。整形したというだけで「気持ち悪い」という人がいる世の中でしたし、たくさん傷つきましたよ。「整形しているということは頭がおかしいんだ」とか「モテたいから整形しているんでしょう?」とか、私の心の内を勝手に分かったようにコメントしてくる人がいました。私がどういう思いで整形をしているのか、どれだけ苦しい思いをしてきたかも知らずに、分かったようなコメントをしてくる。それが一番悲しかったし、むかつきました。

 チャンネル登録者数が増えて、動画の再生回数が増えることはYouTuberとしてすごく誇らしいことなんですけど、同時に数が増えれば増えるほど言い返せなくなっていく。守るものが大きくなっていくので。だから、悔しくて。たとえ、言い返したところで、その人は分かろうと思わないだろうし、こちらが何かを失うだけで、向こうは失うものは何もないんですけどね。

――整形はずるいという人も最近はいますよね。

 ちょっと私の顔が変わったことで、あなたの美醜に何も関係ないし、あなたに迷惑かけましたか、って思います。簡単にきれいになれるからずるい、ってことなんですかね? みんなビフォアーとアフターしか見てないから、魔法みたいに見えるからでしょうね。ダウンタイムとか結構グロいこともあるのですが、現実を知らないからずるいとか言うのかな。

――YouTubeではダウンタイムの顔を出して、見方を変えれば自分を見せ物にしたとも言えると思うのですが、抵抗はなかったのですか?

 見世物になってやろう、くらいの気持ちですね。正直、YouTubeに動画を投稿したところで何十回再生で消えていく人もいっぱいいると思うんですよ。そうなる方が怖いと思ってしまって。誰からもコメントをもらえず、コミュニティもできず、自分も楽しくなくってやめていく方が怖い。じゃあダウンタイム載せて、誰もやっていない新しいことをしたら、見てくれないかなと。あとは弱みを見せることで共感してくれるかな、という仲間探しですね。

なぜ整形するかと聞かれたら

――そのことを踏まえてあえて聞きますが、なぜ整形をするのかと聞かれたら、今ならなんと答えますか?

 昔の私だったら「自分のため自分のため」と思っていたけど、人に植え付けられた劣等感が根本にあったので、人のためというのも少なからずあったと思うんですよ。人が育てた劣等感のため、というのがあったと思うんですけど、今は誰かにブスと言われても、「ですね、はい、わかりました」みたいな感じです。今は完全に自分と、自分の前向きな気持ちと向き合うためかな。

――今はそんなに整形したくない?

 全然やりたくないです。もちろん顔面でここが良かったらいいのにな、というのはいっぱいありますけど、それがそこまで邪魔していない。自分の進む道に雑草が生えているとしても、抜かないと進めないほどではない。メイクで変えてみようとか、他の道に進むことができるようになってきて。昔は「この一本道しかない」という思い込みで、塞がれているから行けない、(整形を)やるしかないぐらいの気持ちで追い詰められていたんですけど、今は前向きにはなったんですかね。いろんなルートが見えた。

 でもやっぱり昔の自分があってこそ。二重にした自分とか、骨を切った自分がいてこそだと思うんですよ。だから整形した自分を否定するわけではないんですけど、今はあぁ、こっちにもこっちにも道はあったんだと気づけました。

――気づけたのはYouTubeのおかげですか? それとも年齢とともに気づいたのでしょうか?

 YouTubeも大きいですけど、一番大きかったのは環境が変化して、自発的に考えを変えるということがすごく多くなったからだと思います。私はすごく内気で、服を買いに行っても店員さんと話すのが無理で、クラスにいてもラノベを隅っこで読んでいるのが心地よかったタイプなんです。

 でも、こういう職業をしていたらそうは言っていられないじゃないですか。だから、楽しいと思い込むとか、リア充と思い込んで外に出るとか、自分をうるさいぐらい捻じ曲げていったんですよ。それを続けていくうちに、だんだんそれが自分の本当の考えになってきて、外に出るのが楽しいかも、って気づきがいっぱいあって。そうやって自分の考えを内側から変えていったのが大きいのかなって思います。

――これからもYouTuberとしての活動は続けられると思いますが、これからの目標を教えてください。

 本を出版するという夢は叶えたので、次はこの本を原案に映画を作ってみたいです。もともと声優になって演技の道に進みたかった夢があったので、そういう方と仕事で関わって、何かを作りたいという思いがあります。

 整形に関しては、クリニックのプロデュースなどをして、整形しているみんなのサポートに回りたい気持ちが出てきています。相談のDMがすごく来るんですよ。どこのクリニックがいいですかとか、親が許してくれませんとか、親に同意書を書いてもらえませんとか。

 そういうとき、私は整形をしたいと言うだけではなくて、整形した上で何がしたいかを話してみたら、と言うんです。一重まぶたがコンプレックスだったから、「お化粧を楽しみたいんだ」とか。大それたことじゃなくていいから、今苦しいことと、将来何がしたいか話してみたらと言うんです。最近は数が多くて答えられてないんですが、これから一人ひとりに答えていければと思っています。