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福音館書店「火山はめざめる」 科学シリーズ半世紀、「知りたい」に応え

『火山はめざめる』から、昭和の噴火の場面

 緻密(ちみつ)な考証をもとに再現された火砕流や火山灰が見開きいっぱいに広がる。はぎわらふぐさん作、早川由紀夫さん監修の絵本『火山はめざめる』(福音館書店)は、福音館書店で1960年代からつづく「科学シリーズ」の一冊として昨年刊行された。

 《火山がめをさますのは、ねむりのあいまの、ほんのひとときだけ》

 『火山はめざめる』では群馬県の浅間山をモデルに、昭和、江戸時代、平安時代に起きた三つのタイプの噴火と、2万5千年前の山体崩壊が描かれる。

 半世紀にわたってシリーズが取り上げてきた題材は、昆虫から宇宙、電力まで幅広い。『火山はめざめる』の企画を担当した橋本露亜(ろあ)さんは、シリーズ発足の経緯を「科学へのあこがれが強かった時代。最初はアメリカの本を翻訳していたようだ」と話す。宇宙開発が進み、科学教育にも力がこもった。

 しだいに翻訳作品では飽き足らず国内の作家を多く起用するようになった。図鑑の説明にはない、ストーリー性が画期的だった。「それでも、やっぱり科学はお堅いというイメージを持たれていた頃もあった」と橋本さん。

 流れが変わった、と感じたのは3・11の福島第一原発事故後だという。

 「ノンフィクションに興味を持つ人が増えた。もっと自分が住んでいる世界をちゃんと知りたい、と思い始めた印象がある」。『火山はめざめる』について、「噴火は怖いとみんな言うけれど、噴火で何が起きるのか、正確には知らない人も多いのではないでしょうか」と企画意図を話した。(興野優平)=朝日新聞2020年2月29日掲載