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加藤シゲアキさん「できることならスティードで」インタビュー 書くことで続く旅、ジャニーさんのことも 

 アイドルグループ「NEWS」のメンバーで、小説家としても活躍する加藤シゲアキさん。旅をテーマにした『できることならスティードで』(朝日新聞出版)は初めてのエッセー集だ。文芸誌「小説トリッパー」の連載に、タイトルに使ったバイクが登場する書き下ろしの掌編を加えた。

 キューバへの旅は、トランクに入れたヘミングウェー『日はまた昇る』と現実の風景がシンクロする。「大阪」は、東京で見逃した舞台を見に行き、ホルモンを食べるだけの旅。帰りの新幹線で見かけた光景から、思索が広がってゆく。

 「書くことで思い出し、思い出すことで、その旅が今も続いているように感じます」

 15編のうち2編が、身近な人の死にまつわる話になった。「岡山」は祖父の死を機に、父の言葉から祖父の素顔を浮かび上がらせる。連載最終回の「浄土」は所属事務所の社長、ジャニー喜多川さんとの別れ。かつて「最悪だよ」と言われたこと、苦手意識があったこと、訃報(ふほう)を受けて集まったみんなであの人の眼鏡をかけて遊んだこと、その眼鏡越しの景色のゆがみ。

 「書かずにはいられなかった。ジャニーさんに書かせられたようで、供養の気持ちもありました。書くなら体に熱が残っている今のうちに、と。自分に向けて、今はなきあの人に向けて書いていました」

 レギュラー番組にドラマ、舞台と忙しい日々の中で、創作も意欲的。「小説新潮」と「anan」で連載中だ。「作家業のためにグループの仕事を制限はしない。それでも少し時間があくと本が読みたくなって、その本が面白くても面白くなくても、書きたくなる。結局、書きたいんでしょうね」(中村真理子)=朝日新聞2020年3月18日掲載