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「10万円」元手に文章コンテスト 作家・岸田奈美さん主催

 新型コロナウイルス対策の一環で全国一律に配られる10万円を賞金に、一風変わった文章コンテストができた。作家の岸田奈美さんがつくった「キナリ杯」だ。賛同者がカンパし、賞金総額は100万円となった。

 命名は、「事実も小説も奇なり」とのモットーから。ウェブサービス「note(ノート)」で「#キナリ杯」とタグ付けした投稿が対象、審査員は岸田さん1人。「岸田がおもしろい文章を読み、岸田が褒めちぎりたいがために、岸田が開催する」と宣言する。

 岸田さんは、1991年生まれ。ダウン症の弟がいる。中学2年生で父を心筋梗塞(こうそく)で亡くし、高校1年生で母が大動脈解離で下半身まひになった。昨夏からnoteで家族について書いた記事などが爆発的に人気を呼び、今年1月「文芸春秋」の巻頭随筆の書き手に抜擢(ばってき)された。「小説現代」でも連載を持つなど、いま最も熱い書き手の一人だ。noteから世に出ただけに、恩返しの気持ちがある。「たくさんの人に応援されて作家になったので、私が応援したいと思った」

 「おもしろいという感覚は人によって違う」と、賞は「超無限優勝」や「読みたいことを、書けばいい賞」など39賞。28日現在、2400件の応募がある。応募は31日まで。結果は6月3日、岸田さんのnoteとツイッターで発表される。(興野優平)=朝日新聞2020年5月30日掲載