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だるまちゃん、ぐりとぐら…絵本の国から「こんにちは おてがみです」 家族や友だちに手紙を書きたくなる

文:日下淳子 写真:福音館書店提供

 最近、誰かから手紙を受け取ったことはありますか? メールやSNSの文化が隆盛し、手書きの手紙を書く機会は格段に減りました。でも、心のこもった直筆の手紙を受け取ると、とても温かい気分になれます。元気にしているんだと嬉しくなるとともに、相手が自分のために一筆したためてくれたというその想いが心にしみるのです。

 あ、あなたにも手紙が届きましたよ。誰からでしょうか?

 昔一緒に、絵本の中で遊んだでしょう? 一緒にてんぐちゃんの帽子を欲しがったでしょう? ロングセラーの絵本『だるまちゃんとてんぐちゃん』(福音館書店)に登場した、だるまちゃんからのお便りです。

 実はこれ、2006年に発刊された絵本『こんにちは おてがみです』(同)の中に入っている手紙です。月刊「こどものとも」の創刊50周年を記念して作られたこの本には、絵本の主人公から読者へのお便りが収録されています。「ぐりとぐら」「だるまちゃん」「たろう」「ばばばあちゃん」などのシリーズの主人公から、計10通のお手紙を配達してくれるところからお話が始まります。ページをめくると、ちゃんと封筒があって、中から便箋を取り出すと、主人公たちからのメッセージが書かれているんです。

『こんにちは おてがみです』(福音館書店)より やまんばのむすめ まゆのおはなしシリーズ『まゆとおに』のまゆから

 この本を企画編集した福音館書店の関根里江さんは、絵本の主人公は子どもにとって一緒に遊んだお友達のような存在なのだといいます。封筒から便箋、文字のクセに至るまで、お友達からどんな手紙がきたら子どもたちが喜ぶだろうと、作家さんが一生懸命考えてくださったのだそう。

 「個性あふれる手紙がたくさん届きました。佐々木マキさんの描くおおかみからは、なんと『け』の一言だけ! 開いたときにびっくりして、みんな大笑いです。いろいろ考えた上でこの内容になったのですが、不思議がる子どもたちには『やっぱりおおかみ』を読んでみてね、と詳しく説明しないことにしています」

 「こどものとも」700号記念のときは『こんにちは またおてがみです』(同)という続編も発売。このときはまた別の作品の主人公たちが参加しています。これは「さくぴーとたろぽう」のおはなしシリーズから、おばけ一家より届いた手紙。

『こんにちは またおてがみです』(福音館書店)より 『おばけかぞくのいちにち』のおばけ一家から

 一番小さいおばけの子は絵を描いたり、文章も左右反対の文字で書いてあったり。子どもが書くと「間違ってるよ」と正される鏡文字ですが、「これは鏡に映すと読めるおばけ文字」だなんて、発想がとてもユニーク。子どもの視点を大事にする作家さんの心意気が表れています。

 「メールや電話のほうが手軽だけれど、手紙って、ものじゃなく言葉を贈る文化だと思うんです。母の日や父の日、誕生日などに、普段は照れくさくて言えないことを、言葉にして贈るっていいですよね。私は便せんや封筒、シールや切手などを選ぶのも好きで、素敵な便箋があるとつい買ってしまいます。高校生の娘の友達の間でも、いま手紙を交換するのが流行っているのだそうです。スマホがこれだけ普及しても、わざわざ手紙を書いて、交換した手紙を貼ってとっておくノートまで作っていると聞いて、やっぱり手紙って特別なものなんだなあと思いました」と関根さん。しばらく会えていない友人に、手紙を書いてみたくなったそう。

 お変わりありませんかと一言書くだけでも、もらった人は嬉しいもの。まだまだ遠出がはばかられるこのごろ、あなたも遠くの両親や久しぶりの友人に、直筆のお手紙を書いてみませんか?