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「米寿を過ぎて長い旅」書評 一節一節が心に残るエッセー

評者: 長谷川逸子 / 朝⽇新聞掲載:2020年07月25日
米寿を過ぎて長い旅 著者:山折哲雄 出版社:海風社 ジャンル:人生訓・人間関係・恋愛

ISBN: 9784876160624
発売⽇: 2020/06/15
サイズ: 19cm/295p

「ひとり」を楽しむけれど、孤独じゃない−。生きるということ、老いるということ、死を迎えるということの意味を自らの生老病死に重ね合わせて、日本人の本質に迫る。深い思考と寛容…

米寿を過ぎて長い旅 [著]山折哲雄

 宗教学者で評論家の著者が、専門家らしい考えとウィットに富んだ姿勢で書いたエッセーをまとめた。
 例えば「座の文化」について。ロダンの「考える人」は背を丸めているが、京都市の広隆寺にある半跏思惟(はんかしゆい)像は、椅子に座り片腕を上げ、背筋を伸ばすポーズで、中国や朝鮮半島に見られる座法をしている。ロダンは呼吸が整えられていないように見える。この後おそらく直立歩行の生活になる。一方で半跏思惟像は再び大地に座る生活に戻るだろう。考える人はデカルトの「われ考える、ゆえにわれあり」に通じ、半跏思惟像は道元の呼吸法を抜きに考えられないという。
 また、フィギュアの羽生結弦選手が「氷上のマイケル・ジャクソン」と評される理由を、「身体演出のベクトルが、死もしくは死体へのぎりぎりの接近におかれている」と考察し、その試みは世阿弥(ぜあみ)の究極の目標だったと記している。
 一節一節が心に残り、楽しく読める本だ。