私たちの生活を一変させた新型コロナウイルスをはじめ、発酵食品を生み出す乳酸菌やコウジカビ、ペニシリンを作り出すアオカビなど、私たちの身のまわりには多種多様な微生物が存在します。そもそも人間の体には数百兆個もの微生物がいるんだそうです。
これほど身近でありながらも、人間の目に見えないこともあって、微生物についてあまり知らないという人が多いのではないでしょうか。腸活や発酵食品がブームとなる昨今、微生物入門としておすすめしたいのが「世界一やさしい! 微生物図鑑」です。
本書は、東京理科大学教授の鈴木智順さん監修の下、身近な微生物たちをキャラクター化して、その特徴や私たちの生活との関わりについて解説。ゆるくて可愛いイラストから子ども向けなのかと思いきや、読み応えのある情報量に「へえ〜」の連続でした。
例えば、食中毒の話題でよく耳にするボツリヌス菌。猛毒を生む恐ろしいイメージとは裏腹に、美容整形のシワ取りなどに一役買っているんだそう。筋肉を麻痺させる毒素の性質を生かしつつ、毒性を弱めた「ボトックス」という薬として使われているとのこと。米国のテレビドラマ「セックス・アンド・ザ・シティ」のサマンサが夢中になっていた、あのボトックス注射のボトックスです! 美容の世界と微生物がつながっていたことに、驚かされました。
微生物の中には危険で注意すべきものもありますが、本書を読むと、食べ物や医療、エネルギーなど私たちの生活のさまざまな局面で微生物が活躍していることに気づかされます。とはいえ、人類が発見した微生物は地球上に生息する微生物のわずか1%にしかすぎないとも言われているのだとか。今後の微生物研究の発展にも期待したいところです。