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「100文字SF」書評 わずかな文字でも爽快感と深い余韻

評者: 須藤靖 / 朝⽇新聞掲載:2020年09月12日
100文字SF (ハヤカワ文庫 JA) 著者:北野勇作 出版社:早川書房 ジャンル:SF・ミステリー・ホラー

ISBN: 9784150314316
発売⽇: 2020/06/04
サイズ: 16cm/204p

火星を目印にすれば複雑な路地を抜けて簡単に帰宅できると聞いてずっとそうしてきたのに、火星だとばかり思っていたあの赤い星が火星ではなく…。ほぼ100文字のSF小説200篇を…

100文字SF [著]北野勇作

 書評を始めた頃は、本一冊の魅力をたった400文字で紹介できるはずはないと思った。でもすぐに気づいた。何でも長けりゃ良いなどというものではない。
 俳句は、わずか17音でも無限の世界を記述し尽くす。逆に、相田みつをの言葉が400文字続いたならあそこまで我々の胸を打つものだろうか。結局は自分の表現力の問題に尽きる。
 著者がツイッターで発表している「ほぼ百字小説」約2千編のなかから約200編を精選し文庫化したのがこの『100文字SF』。でもSFというよりはショートショートに近い。いっそのことショート・ショーター・ショーテストと活用して呼びたくなるほど中身が濃い。
 わずか100文字で読者の頭に爽快感と深い余韻を残す著者のセンスはただ者ではない。その極意は、自己言及と無限連鎖の相乗効果にあるようだ。これほど濃密な本一冊の魅力をたった400文字で紹介できるはずはない……。アレ?