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映画「とんかつDJアゲ太郎」出演の山本舞香さんインタビュー 濃いキャラの中で演じた「THE・ヒロイン」

文:根津香菜子、写真:山田秀隆

オリジナルの苑子をつくりたかった

――山本さんは今回、原作を読まずにクランクインしたそうですね。

 それには理由があって、私は原作に引っ張られたくない、自分なりの、オリジナルの苑子をつくりたいと思ったからなんです。北村くんとは4年くらい前に「JR SKISKI 」というCMで共演して以来なんですが、その時のこともあった分、アゲ太郎と苑子の関係性のリアルな部分もお芝居で出るかなと思いました。

©2020イーピャオ・小山ゆうじろう/集英社・映画「とんかつDJアゲ太郎」製作委員会

――「今日から俺は‼ 劇場版」に続き、漫画原作実写化の出演が続いていますが、原作物に出演する時に心がけていることはありますか?

 「原作を意識しないこと」ですね。もちろん原作には原作のいいところがありますが、実写は生身の人間がお芝居をしているので、そこはリアルが出ていいんじゃないかなって思います。あとは、原作ファンの人を裏切るようなことはしたくないので、中途半端にやらないことですかね。今回は「THE・ヒロイン」という苑子を、自分の思った人物像で演じたいと思いました。

――アゲ太郎やDJオイリーなど個性強めな濃いキャラクターたちの中で、山本さんが演じられた苑子は一番普通な女の子に思えますが 、苑子をどんな女性と捉え、どう演じようと思われましたか。

 私は苑子のことを「THE・ヒロイン」と思って演じました。明るくて、いつもニコニコしていて、誰もが「この子、いいな」って思ってくれたらいいなと思いながら演じていましたし、自分の中ではそれがお芝居という感覚でもなかったですね。素の自分と苑子のキャラクターが似ているというよりも、自分の弱みも出しつつ、誰かを助けたいという点で、親近感をもってもらいながらアゲ太郎を支えていくという感じを出したいなと思いました。

 映画では、アゲ太郎が一度DJを目指すことを挫折した時に、苑子が「自分もスタイリストの卵で失敗もいっぱいする。でもこの仕事が好きだからやりたい」と気持ちをしっかり伝えるシーンがあるのですが、そこは緊張しましたね。

――山本さんが思う「これぞ、ヒロイン」とは?

 どんなに暗い作品でも明るい作品でも、そこにいるだけで安心できるっていう女の子が「THE・ヒロイン」なんじゃないかなと思います。見ている方がホッとできるような笑顔で「こういう子がいたらいいな」っていう女の子を表現出来ていたらいいなと思って演じました。

 私自身は元々そんなに笑う方じゃないし、声も高くはないから、苑子を演じるときは声をワントーンあげることや、口を大きく開けて、顔の筋肉をやわらかくするということは意識していましたね。

©2020イーピャオ・小山ゆうじろう/集英社・映画「とんかつDJアゲ太郎」製作委員会

――ロケは渋谷の街で行われたようですが、アゲ太郎がYouTubeにあげる映像にはハチ公前が使われていたり、「ここ知ってる!」と思うシーンがたくさん出てきますよね。

 自分が知っていたり、行ったことがあったりする場所が映画に出てくるとテンションが上がりますよね。映画って知らない場所が出てくることが多いじゃないですか。だからこの作品は、親近感がわく人が多いんじゃないかな。私も高校生の頃、学校帰りに友達と渋谷によく行っていました。東京都内や都内の近くに住んでいる方だったら、「あ、ここ知ってる」と思う場所も多いと思うので、そこも楽しみながら観てほしいなと思います。

――アゲ太郎の友人で、渋谷にある店の三代目仲間「三代目道玄坂ブラザーズ」の皆さんもそれぞれ個性の強いキャラクターでしたが、共演してみていかがでしたか?

 加藤(諒)くんとはプライベートでも仲がいいんですよ。浅香(航大)くんと前原(滉)さんは以前共演したことがあって、栗原(類)くんは初めての共演でした。みなさんすごくカラフルな印象のある方々でしたね。それぞれの個性も強いし「よくこの4人をキャスティングしたな」って思うくらい。出来上がった映画を観た時に、お互いがいい色を出し合って、それが役としても映画としても成立しているから、ダンスや会話のやりとりもめちゃめちゃ面白いし、すごいなって思いました。アゲ太郎のお父さん役のブラザートムさんもすごくかっこいいし、色々な方のいい個性の色が入り混じって、本作ができているんだと思います。

©2020イーピャオ・小山ゆうじろう/集英社・映画「とんかつDJアゲ太郎」製作委員会

――山本さんが一番「バイブスが上がった」シーンを教えてください。

 終盤で、アゲ太郎がクラブで曲を流すシーンがあるんですが、そこで苑子がすっごく喜ぶんですよ。そこは脚本には書いていなかったんですが、私自身も本当にテンションが上がりました。北村くんは今作が初コメディで、しかも単独主演作だから座長として一生懸命だったし、努力している姿を見ていたから、そこのシーンで全部フラッシュバックして、お互い泣きそうになっちゃいました。バイブスが上がったというよりも、思い入れのあるシーンですね。

いつか動物の保護施設を

――とんかつ弁当の配達に行ったアゲ太郎が、一瞬にしてクラブとDJに心を奪われたように、山本さんにもそういった経験はありますか?

 昔、犬が飼いたくて、ずっと「犬が欲しい」って言っていたんです。私は小さい頃空手を習っていたのですが、ある日練習が終わって家に帰ったら、お父さんがサプライズで犬をかってきてくれて、すごく嬉しかったですね。あの時から、動物に対しての考え方が変わって、関わり方をすごく考えるようになりました。

 「犬ってこういう時はこう思っているんだ」とか、動物は言葉を話せないから、こっちが読み取ってあげないといけないし、人間に対して「ちょっと!」と叩くのと同じ力で犬を叩いたりしたら大変なことになっちゃうので、そういうことをこれからどんどん広めていきたいなと思っているんです。だけど今はこういう時期だし、中々実行できないでいることも多いのですが、いつか動物の保護施設をつくりたいと思うようになりました。あとは、将来自分が母親になった時、子供にも生き物の大切さを学んでほしいなと思います。

――ところで、山本さんは普段、読書をされますか?

 本はあまり読まないんですが、お仕事で台本を読むことが多いので、速く文字を読むことを身につけたいなと思っています。小説を買って読みたいなとは思うんですけど、どんな本がいいのかよく分からないので、出演している「王様のブランチ」のBOOKコーナーでは「こういう本があるんだ」と毎回勉強になります。

――特に気になった本はありますか?

 以前、「ブランチブック大賞」にもなった『かがみの孤城』(辻村深月)は読んでみたいなと思いました。気になるジャンルはミステリー系ですね。どうやってその謎を解くのか興味があるし、賞を取る作品ってどういうものなんだろうというのは気になりますね。

 あとはインスタグラムで、おすすめの投稿やストーリーが流れてくるじゃないですか。そういうのから「これ面白そうだな」って思う作品があることもありますし、色々なところからの情報を見て「こんな本があるんだ」と気づくことが多いです。ただ、そこから実際に読むという先にまでが進まないんですよね(笑)。でも、今年で23歳になるので、これからは本や色々なものから知識を入れていきたいなと思っています。

――本の情報を知りたい時は、ぜひ「好書好日」をご活用いただければ!

 はい。見てみますね!