森高千里さん『森高千里「この街」が大好きよ』インタビュー 素の私が歩いた、36カ所の出会い
２０１９年、２１年ぶりの全国ツアーはゆっくりした日程だったので、２０代の時には出来なかった「街歩き」をしようと思いつきました。それをコンサートのＭＣにも生かし、期間限定のインスタグラムも立ち上げて、訪れた街の魅力を紹介しようとしたのがきっかけです。当初はこんなフォトエッセーを出版すると思っていなかったので、写真はスタッフがスマホで撮り、食べ物は私が撮影しました。
ツアーのタイトルでもあった「この街」は、１９９０年に発表した楽曲です。仕事で上京した後、生まれ故郷の熊本が変わっていくのが寂しくて、ふるさとの自然や方言の良さを思い浮かべてもらえる曲があるといいなという思いを込めて自分で作詞した歌です。
今回、実際に街歩きをしてみると、人が少なくなった商店街や同じ景色にみえる街もありました。でも、街を活性化しようとしている若い世代にも出会いました。そんな日本の今を伝えた本なので、これを読んだ方に、まだ知らない日本の街の魅力に気づくヒントにしてもらえたらうれしいです。
昔ながらの商店街、おいしい物の情報を事前に調べて、季節感も考えて３６カ所を歩きました。衣装もすべて私服。色は抑えめ、シンプルで動きやすいファッションが素の私です。初めて渦潮を見た徳島の鳴門海峡、お店の人に教えてもらいながらたくさん試食した青森駅前地下の新鮮市場、商店街の先に富士山が見える静岡県富士市の商店街……。歩いていると、地元の方が声をかけてくれてお話できたのもうれしかったですね。
今年のツアーは、新型コロナの影響で中止や延期になりました。残念ですが、コロナ後に音楽や文化がどう変わるか楽しみでもあります。（構成・久田貴志子）＝朝日新聞2020年10月21日掲載
