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中村太一「日本古代の都城と交通」 古代の道の姿、いきいきと考察

古代の山陰道の復元イラスト。道の右側には柳の街路樹が並んでいた=鳥取県埋蔵文化財センター提供

 古代の道路はどんな様子で、どのような人たちが使っていたのか――。古代の日本列島の交通や流通から、それらが集中する「都城」(都市計画にのっとって設計された律令国家の都のこと)との関わりまでを論じた『日本古代の都城と交通』(八木書店)がこのほど刊行された。

 著者は北海道教育大学釧路校の中村太一教授(日本古代史)。『日本の古代道路を探す―律令国家のアウトバーン』などの著書がある、古代道路研究のプロフェッショナルである。

 専門家向けの論文を集めた体裁をとってはいるが、各章には「倭王権の道路整備」「日本古代の道路と景観」「市と交易者」など、歴史好きな読者が興味をひかれそうな主題が並ぶ。

 「都市や交通といった人類史共通のテーマを日本史の枠組みで考えることで、日本の歴史の普遍性と独自の歴史的状況の双方が見えてくる」と中村さん。

 発掘の結果、柳を道路わきに植えていたことがわかった古代の山陰道の復元イラストなど、図表や写真類も百数十点が収録されており、理解を助ける工夫もなされている。

 本書は言葉遣いこそ専門的だが、飛ばし読みするだけでも、国家の力を誇示するために整備された幅10メートル超の古代道路を、高度な専門性を持ち、キャラバンなどを組んだ遠距離交易者が行き来していた様子が眼前に浮かんでくる。(編集委員・宮代栄一)=朝日新聞2020年12月16日掲載