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ハンセン病と闘い続けた作家・北條民雄 文庫「いのちの初夜」半世紀ぶり復刊

(左)『いのちの初夜』(角川文庫)(右)作家・北條民雄=国立ハンセン病資料館提供

 自らのハンセン病との闘いをモチーフにした作家・北條民雄(1914~37)の短編集『いのちの初夜』が角川文庫で半世紀ぶりに復刊した。

 現在の徳島県阿南市で育った北條は、14歳で上京し働きながら文学を志すが、ハンセン病と診断され、19歳で東京都東村山市の全生病院(現・国立療養所多磨全生園)に入院する。創作への思いは断ち難く、川端康成に原稿を送ると認められ、複数の作品が文芸誌「文学界」や総合誌「改造」などに掲載された。中でも「いのちの初夜」は隔離入院時を描いた小説で「文学界賞」を受賞。だが腸結核のため23歳で亡くなった。

 角川文庫の初版は55年、最後の改版が70年。創元ライブラリから上下巻の『定本 北條民雄全集』も96年に刊行され、高山文彦さんの評伝『火花』が2000年に大宅壮一ノンフィクション賞などを受けたが、一部ファンを除けば忘れられた作家といえた。

 角川文庫編集部によると、今回の復刊はコロナ禍がきっかけ。川端があとがきで記す「病衰と虚無とに沈まず、絶望がかえって精神を強めた」文学世界にふれることができる。高山さんの解説も加わった。

 東村山市は日本ペンクラブと共催で、19日午後3時から「ふるさとと文学2020 北條民雄と多磨全生園」と題した催しをライブ配信する。俳優の竹下景子さんと作家のドリアン助川さんの対談、北條と川端の書簡を紹介する音楽ライブ、全国ハンセン病療養所入所者協議会事務局長の藤崎陸安さん、作家の中島京子さん、吉岡忍さんらのシンポジウムもある。

 日本ペンクラブのユーチューブ公式チャンネルで無料視聴できる。申し込み不要。(藤生京子)=朝日新聞2020年12月16日掲載