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映画「あの頃。」主演の松坂桃李さん&原作者の劔樹人さんインタビュー 「あやや」は圧倒的存在だった!

文:根津香菜子、写真:斉藤順子

2学年上に「あやや」がいた(松坂)

――まずは松坂さんが今回のオファーをうかがった時の率直な気持ちと、原作を読んだ感想を教えて下さい。

松坂桃李(以下、松坂): このお話を頂いた時は、運命めいたものを感じました。というのも、僕が中学1年生の時、同じ学校の2学年上に松浦亜弥さんがいらしたんです。当時は本当に雲の上の大先輩で、圧倒的存在でした。地元のスターだったので、オファーを頂いたのが松浦亜弥ファンの役と聞いて「やります!」とお引き受けしました。作品について詳しくお話を聞くと、ハロプロファンの劒さんの実体験を書いた本が原作とのことで拝見したのですが、ハロプロへの思いや仲間との思い出といった深い内容を、そこで汲み取ることができました。それに、劒さんがこれまで歩んできた道がエキセントリックすぎてすごいなと(笑)。

劔樹人(以下、劔):周りの友達がね(笑)。僕自身は大したことないですけど。

松坂:いやいや。「中々シビれる人生を送っておりますね~」という印象でした。

ヘアメイク: 高橋幸一(Nestation)、スタイリスト:小林新 (UM)

松坂さんが自分に見えた(劒)

――ハロプロへの熱いパッションを含め、当時の劒さんをどれほど再現できているかジャッジできるのはご本人しかいないと思うのですが、劔さんは撮影現場や完成した作品をご覧になっていかがでしたか。

劔:とにかく松坂さんがちゃんと自分に見えるんですよ。撮影中にカメラのピントがズレて、ふわっとボケた時に「あれ? 若い頃の僕ってこんなんだったな」って本当に思ったんです。実物は全く違うんですけど、そう見えてしまうのがすごい。それに「こんな感じで背中丸めて自転車に乗っていたな」とか、「こんな風に弁当をかき込んで食っていたな」とか、自分だからこそ分かる些細なところや「そうそう」と思うところがいくつもあるんです。これを言うと、周りの人たちから小バカにされたり、苦笑されたりするんですが。

松坂: 僕はそう言ってもらえてすごく嬉しいですよ!

©映画『あの頃。』製作委員会

――松坂さんは本作で劒さんを演じるにあたり、歩き方など、劔さんの特徴をよく観察されていたそうですね。

松坂:そうですね。初めてお会いした時に、劒さんと2時間くらいお話ししたんです。その時に「お話しするとこういう感じで返すのか」とか「服や小物も赤が多いから、きっと好きなんだな」とか。

劔:わはははは。そうなんです。一時期から赤ばかり着るようになったんですよね。

松坂:人との会話の仕方や、何かを待っている時の雰囲気とか、劒さんのそういう些細なところが特徴的だなと思い、演じる上ですごく参考になったので、今回の現場では「他にも何かつかめるものはないか」と、ずっと劒さんを見ていようと思っていました。

――劒さんの内面はどう捉えられましたか。

松坂:すごく優しい方なんですけど、原作を読むと意外と毒づいているところもあって、そこも劒さんという人が持つバランスなのかなと思いました。人と接する時もやわらかい印象があって、なるべく傷つけないようにされるのですが、後からちょっと毒を添えるような感じの瞬間がある。そこのバランスをうまく演じることが出来たらいいなと思っていました。

劔:そういうところも松坂さんはちゃんと見てくれていて、見抜いたのはすごいなと思います。

――劒さんが初めて「あやや」のMVを見た時に涙が出たというのは、今振り返ってどんな感情だったと思われますか?

劔:多分、ちょっと自分が恥ずかしくなったんでしょうね。こんな風にいじけている自分が。ずっと地下で暮らしていた人間が、地底から昇ってくる太陽のように、明るく輝くものを初めて見たような気持ちがしたんだと思います。

――それくらいまぶしかったんですね。松坂さんはあのシーンを演じられていかがでしたか。

松坂: 劒さんがおっしゃったことに近いのですが、僕は地面から上がってきた太陽というよりも、何か自分の心の中にある重たいものを「あやや」という圧倒的な存在に“すっ”と持ち上げられた感じと言いますか。キラキラと輝く姿を見て、自分の中に溜まっていたものが、そこで決壊するような感じがあったんだと思いました。

――個性豊かな「恋愛研究会。」メンバーの中でも、仲野太賀さんが演じる「コズミン」(原作では「コツリン」)は特にインパクトのある方ですね。握手会に当選した劔さんに「ちゃんと目ぇみて、あややにいつもありがとうって言うんや」というセリフに、コズミンさんの優しさを感じました。

松坂:あの憎めない感じがコズミンさんの魅力なのかなと思いました。だから、今まで彼がやってきたことを仲間がイジリ倒すことで、愛情に繋がっているなと感じました。また、太賀がコズミンさんを演じることで、よりかわいらしい人になっているんですよね。

劔: そうなんです。本人はもっと嫌な感じでしたよ(笑)。コズミン役が仲野さんだったから彼がポップな感じに生まれ変わったというか、幅広い人に面白く受け入れられる人になっているんだと思います。

©映画『あの頃。』製作委員会

「あやや」はハロプロの後輩で!(劒)

――「松浦亜弥・握手会」のシーンで一歩一歩「あやや」に近づいていくときは、どんな気持ちでしたか?

松坂:それはもうドキドキしますよ~! 松浦さん役を同じハロプロのアイドルグループ「BEYOOOOONDS」のメンバーの山﨑(夢羽)さんが演じているのですが、本当にご本人に似ているんです。なんとも言えないきらびやかさがあって、声のトーンとかも「そういえばこんな声や話し方だったかも!」と、中学生だった頃のことが色々とよみがえってきたので余計に緊張しましたし、印象深いシーンでした。

劔:映画化するにあたって、僕からのリクエストは「松浦さんを演じるのは、後輩のハロプロメンバーでお願いします!」ということでした。そうじゃないと、ファンはもちろん、誰にも納得してもらえないと思ったんです。山﨑さんのことは「松浦さんにちょっと似ているな」とずっと思っていたので、本当にありがたかったですね。

握手会のシーンは今泉(力哉)監督がすごくこだわって、ゆっくり時間をかけて近づいていくというファンタジーのような演出が加わっているんです。実際は、松浦さんの顔が見えて握手するまではすごく一瞬の出来事で、思っていることや伝えたいことが頭の中を駆け巡っている感じです。

松坂:そういう瞬間って、スローに感じたりしますよね。例えば、めちゃくちゃ美味しいスープを一口食べた時、その感想ってたくさん頭に浮かんでくると思うんです。それと同じように、本当に一瞬の出来事だけど、とてもゆっくりといろんなことを感じる。それに近い感じがしました。

©映画『あの頃。』製作委員会

「あやや」が校庭で踊る(松坂)

――本作のタイトルにちなんで、お二人が「あの頃」と聞いて思い出すのはいつのことですか?

松坂: 僕はやっぱり中学時代ですね。人生で初めて見た有名人が松浦亜弥さんだったので、その印象がとても強いです。今でも思い出すのは、松浦さんが学校の校庭で「Yeah! めっちゃホリディ」の振りを友達に教えている姿です。その時の松浦さんの動きとか、鮮明に覚えています。あとは合唱コンクールの時とか、当時の光景が色々と浮かんできて「あの頃」のことを思い出すと、今でも「すごい!」って思います。

劔:それはすごい。羨ましいですね。僕は今改めてあの頃の記憶を辿ると、本当にしょうもない日々だったので、人様に見てもらうようなものじゃないんですが(苦笑)、自分でも「あの頃」のことを忘れてきてしまっている部分もあるので、それを記録みたいな感じでこういう形に残してくれたのは、すごく貴重でありがたいことだなと思います。今回映画にしていただいたことで、僕らの「あの頃」が成仏したような気がしています。

――映画では、「♡桃色片想い♡」や「ザ☆ピ~ス!」など、往年のハロプロの名曲が出てきましたね。その曲を聞くと「あの頃」を思い出すことってあるかと思いますが、この本を読むと「あの頃」を思い出すな、という本はありますか?

劔:僕が本で思い出すのは、高校生の時、三島由紀夫の作品を熱心に読んでいた時期があったんです。『憂国』とか『金閣寺』なんですけど。例えば、太宰治にしても芥川龍之介にしても、その人の文章の特徴って何かあるじゃないですか。それを真似しようと思って、三島の書く文章の特徴を一生懸命勉強していたことがありましたね。国語の授業で感想文を書く時も、太宰っぽい書き方を続けてみたり、三島っぽい文章で書いてみたり。そういうのを実践していた時期があったんですよ。結局それが今にどう活きたのかは分からないんですけどね。

松坂:僕は阿部寛さん主演の「麒麟の翼」(原作:東野圭吾)で鍵となる役をいただいたんです。その時の僕はまだそういう役をやったことがなかったので、ものすごく緊張していました。最後の方で阿部さんと共演する長いシーンがあったのですが「できるのか、自分⁈」「大丈夫か、俺⁈」と日々緊張しっぱなしだったんです。そんな時、土井(裕泰)監督からいただメールに「明日は元気な姿で来てください 土井」って書いてあったんです。その一文がかっこよくて、それで気持ちが落ち着いて現場に向かうことができました。それくらい自分の中では思い出深い作品で、あとから原作を読んだ時は、表紙を見ただけでその時のことを思い出しました。

劔:それを聞くと、僕ももっと言わなきゃいけないっていう本があったと思うんですよ。ちょっと待ってくださいね……(考え中)。

――では、思い出されましたら教えてください(笑)。ところで、松坂さんは漫画好きでも有名ですが、最近のおススメはありますか?

松坂:最近改めて『HUNTER×HUNTER』(冨樫義博作)が面白いなと思っています。今『鬼滅の刃』がすごい人気ですけど、鬼滅が好きな人は『HUNTER×HUNTER』も好きなはずだと僕は思っているんです。

――それはなぜでしょう?

松坂:主人公以外のキャラクターや敵も魅力的に思えるところや、ちょっと「中2感」があるところですね。あとは、格好がいびつというか、鬼も変な形や形相で出てくるじゃないですか。『HUNTER×HUNTER』でも、敵がそういう感じで出てくるときがあるんですよ。そういう似た部分や共通するところがあるので、鬼滅が好きな人は『HUNTER×HUNTER』も好きなはずです!

と言いつつ、僕はまだ「鬼滅の刃」の映画を観ていないので、これからもっと研究したいと思っています。それに、このコロナ禍であれだけの人が映画館に観に行く作品って、ある意味映画界の希望だと思うんです。映画をはじめとするエンターテインメントを中々楽しめない状況の中で、すごく救いだったんじゃないかと思います。

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