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「きらめく共和国」書評 底知れぬ人類の闇の裏に

評者: いとうせいこう / 朝⽇新聞掲載:2021年01月16日
きらめく共和国 著者:アンドレス・バルバ 出版社:東京創元社 ジャンル:小説

ISBN: 9784488011055
発売⽇: 2020/11/11
サイズ: 20cm/179p

【エラルデ小説賞(2017年)】亜熱帯の町に現れた理解不能な言葉を話す32人の子どもたち。彼らは盗みを働き、市民を襲い、そして一斉に死亡した。事件に関わった語り手が、22…

きらめく共和国 [著]アンドレス・バルバ

 地味なタイトルでうっかり見落としかけた。ふと取り寄せて読んでみると、これが傑作であった。
 語りは22年前を指し示す。どこでもないサンクリストバルという亜熱帯の町に、気づくと子供の集団がまぎれ込んでいる。9歳から13歳までだとされる者らは誰にも理解出来ない言葉で語り、一体どこで休んでいるかもわからない。
 それがある日、残忍な襲撃事件を起こして長く失踪し、やがて32人が遺体となって町に横たわる。
 作品はそれまでの奇怪な事実を、町に越してきたばかりの社会福祉課の公務員を通して詳細に語る。謎めいた比喩を多用しながら。
 読んでいて我々は何か途方もない人類の闇に触れるが、その透明で底のない対象はいっこうにつかめないままである。子供たちは凶暴で優しく、独立しながら緊密な共同体を生きる。
 ラスト近く、彼らが秘密裏に行っていたことを知って、私たちはその美しい謎に圧倒されるだろう。

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