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「空き家再生でみんなが稼げる地元をつくる 「がもよんモデル」の秘密」 人が人を呼び「まち」を盛り上げる

 「がもよん」って何かと思えば、大阪市城東区「蒲生(がもう)四丁目」エリアのこと。長屋や古民家が多く残る地域で、十数年前までは空き家が目立っていたという。その老朽化した建物を再生し、魅力ある街へと変えてきた仕掛け人、和田欣也氏の話を中川寛子氏が取材・構成した本だ。

 和田氏の人生に大きな影響を与えたのは、阪神・淡路大震災。瓦礫(がれき)の下から聞こえてきた声に衝撃を受け、地震に強い家を作る仕事をしよう、と決意する。その後、耐震改修するだけでなく、デザイン性を持たせた長屋の物件が注目を集めた。そんな彼に声をかけたのが、がもよんの地主。まずは古い米蔵がレストランへとよみがえった。

 がもよんの空き家を活用した多くは飲食店だ。ここでは週に一度、店主会議が開かれる。飲食店は客を奪い合うライバルではなく「同じまちを盛り上げる仲間」。多彩なイベントで地域内外の人に来てもらえれば、結果的にみんなで潤うことができる。

 和田氏の街づくりが詳(つまび)らかにされるが、大事なのはやはり人。信頼できるつながりが人を惹(ひ)きつけ、また人を呼ぶ。「がもよんにはぐるなびも食べログも要らない」という言葉に膝(ひざ)を打った。=朝日新聞2021年3月6日掲載