1. HOME
  2. トピック
  3. 「風よ あらしよ」で吉川英治文学賞受賞の村山由佳さん 初評伝小説「こわいもの、なくなった」 

「風よ あらしよ」で吉川英治文学賞受賞の村山由佳さん 初評伝小説「こわいもの、なくなった」 

(左から)今村翔吾さん、村山由佳さん、武田綾乃さん、加藤シゲアキさん

 2日に吉川英治各賞が発表され、アイドルグループ「NEWS」の加藤シゲアキさんが『オルタネート』(新潮社)で吉川英治文学新人賞を受賞したことは各メディアで大きく報じられた。ほかにも話題性豊かな受賞者たちが並んだ。

 本賞である吉川英治文学賞は、国内で最も権威ある文学賞の一つ。昨年は該当作がなかったが、今年は村山由佳さんの『風よ あらしよ』(集英社)が選ばれた。大正時代の女性解放運動家の伊藤野枝を描いた評伝小説。恋愛小説に定評がある村山さんにとって初の試みだった。記者会見で村山さんは「こわいものがなくなった。もっと度肝を抜くようなものを書いてみたい」と話した。

 昨年の吉川英治文学新人賞に続き吉川英治文庫賞を受けたのは、今村翔吾さんだ。デビュー作『火喰鳥(ひくいどり)』(祥伝社文庫)から続く「羽州ぼろ鳶(とび)組」シリーズでの受賞だ。「時代小説は文庫本、歴史小説は単行本と二刀流を続けるつもり。昨年(歴史小説『八本目の槍〈やり〉』で)新人賞をいただいたこともあり、まさしくその二刀流を認めていただけた、と感無量です」

 吉川英治文学新人賞に輝いたもう一人が、アニメ化もされた青春小説の人気シリーズ「響け! ユーフォニアム」で知られる武田綾乃さんだ。『愛されなくても別に』(講談社)で受賞した。母親の「愛情」に苦しむ娘が、親との関係を断ち切るまでの物語だ。「10代の自分に伝えたくて書いた。結果としていろんな人に届いたなら、こんなにうれしいことはない」と話した。(興野優平)=朝日新聞2021年3月10日掲載