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映画「ゴールデンカムイ 網走監獄襲撃編」舘ひろしさんインタビュー 激動の時代に生きた「侍」土方歳三の志

舘ひろしさん=篠塚ようこ撮影

(C)野田サトル/集英社 (C)2026映画「ゴールデンカムイ」製作委員会

若い頃からの念願だった土方役

――まずは、土方歳三役のオファーを聞いた時の感想を教えてください。

 僕は若い頃からずっと「土方歳三をやりたい」と思っていたんです。でもこの歳ではもう無理だと思っていたのですが、野田サトル先生の原作のおかげで今回の土方の役をいただけたことはとても幸運だったと思います。

――これまでも様々な作品で描かれてきた土方ですが、今作の「土方歳三」にどんな印象をお持ちですか?

 皆さんも想像されるような「新撰組の鬼の副長」と言われるイメージが強かったのですが、原作を読ませていただいた時、全体的にクールな印象を受けたので、そのニヒルさや冷静さをなるべく伝わるような土方にしたいと思っていました。従来の土方像に加え、今作はそこからもう一つ「北海道を独立させ、日本を守る」という大きなビジョンに進んでいく。元々は農家の出で、武士ではない土方が本物の武士になろうとしたところに魅力を感じましたし、僕個人としては、戊辰戦争で戦死したはずの土方が生きていたという設定も興味深かったです。

日本映画界の力が集結した誇るべき作品

――今作は、原作でも最大の戦いと言われている「網走監獄襲撃編」をメインに描いていますが、作品を見た感想はいかがでしたか。

 駆逐艦は出てくるしセットも大掛かりで、近年にないスケール感を感じました。原作を実写化した中でも、今の日本映画界が持っている最高の力でこれだけ規模の大きな作品に仕上がっていることは、誇るべきことと思っています。

――金塊争奪戦を主軸にしながらも、アイヌの文化や歴史的背景を織り交ぜ、コメディー要素も多い本作ですが、中でも「鮭のチタタㇷ゚」を作るシーンでは「“鬼の副長”と言われた土方があんなことを⁉」と思わず声を出して笑ってしまいました。

 あのシーンでは「土方だったらどうするんだろう」と考え、本来であれば絶対にそんなことはしないと思うけれど、原作に沿って楽しくやらせていただきました。

――主演を務めた山﨑賢人さんの印象はいかがですか?

 よく現場でお芝居の話をする俳優さんが多いのですが、僕はそういう時にあまり芝居の話はしないんです。山﨑くんも同じで、座長として「自分が引っ張っていくぞ!」といった力強い形ではなく、周りの人が自然とこの人についていきたくなってしまう魅力がありますよね。どこかおっとりしたところも彼のスター性を感じますし、良いところだと思います。 

「あのセリフを土方に言うために犬童がいた」

――映画の後半、北村一輝さん演じる犬童四郎助との一騎打ちのシーンは胸に迫るものがありました。

 僕があのシーンで一番心に大きく残ったのは、犬童が戦いの終盤で土方に言うあるセリフです。犬童はもともと武士の階級、それに対して土方は農民から侍になった人なので、そこに一つコンプレックスみたいなものがあると思いました。それでも侍として生きていくと決めた人なので、そのセリフを言われた時の土方の気持ちというのは、どこか嬉しかったんだろうと僕はとらえたんです。なので、犬童との決着はあの言葉に対する礼だったと解釈しました。

――土方のその思いは映画を見ていても感じました。

 基本的に犬童はずっと「悪いやつ」だったんですよ。でもその犬童の生きざまというのは、やはり「侍」だったと思います。そんな彼が、土方に対してあのセリフを言えたことの潔さみたいなものが見ている人に伝わればいいかなと思って演じていました。

――舞台は明治末期。新しい時代の流れに乗っていかなければ生き残っていけないという新政府軍・犬童と、旧幕府軍であり「侍」として志を貫く土方。どちらの気持ちも分かるだけに、この時代の狭間にいる二人の生きざまを切なくも感じました。

 そうですね。やはり土方は侍の出ではないので、本当に侍になろうと、一番侍らしく、純粋な生き方をした男だったのではないかなと思います。二人とも全部を背負って生きているような男たちなので、僕はあのセリフを土方に言うために犬童がいたのかなという気がします。

――舘さんが大切にしている志や信念を教えてください。

 役者としては「もうちょっと真面目にやれ」と言われそうですが(笑)、人間としてということで言いますと、舘家のモットーとして「男子たるもの紳士たれ」があるので、それですね。

過去の失敗から学ぶべきこと

――「好書好日」はブックサイトなので、ぜひ舘さんの読書ライフについてもお聞きしたいです。普段、どんな本を手にすることが多いですか?

 僕は割と、第2次世界大戦の頃の本をよく読みます。なぜかというと、日本はかつて海軍兵学校や陸軍士官学校、今の東京大学にあたる東京帝国大学といった、いわゆる超エリートの人たちが集まって当時のアメリカと戦争をしようと思った。それはもう失敗の宝庫なんです。今考えれば、あんな大きな国とこんなにも小さな国が戦争するなんて、負けるに決まっているじゃないですか。でも、どうしてそうなったのかということを、この時代のことが書かれた書物を読んでいくととても興味深く、史実から学ぶべきことが多々あります。 

 当時はどこか雰囲気で戦争をしてしまったような気がしていて、個人が責任を取らなかった状況が、世論に引っ張られて事を起こしてしまう現代にも通じることが多いと感じています。

ヘアメイク:岩淵賀世 スタイリスト:中村抽里

――何かおすすめの本がありましたら、ぜひ教えてください。

 どういう本を読みたいかにもよりますが、司馬遼太郎さんの『坂の上の雲』や、阿川弘之さんの『井上成美』のような、海軍提督に関する作品なんかも面白いし、もし「紳士道」を学ぶとしたら池田潔さんの『自由と規律』をおすすめします。古い本なのですが、パブリック・スクール(イギリスの伝統的な私立中等教育機関)で過ごした実体験が書いてあって「紳士とはどうあるものか」ということを学べる貴重な本です。