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室生犀星の辛口映画評、あの名画にも 「犀星映画日記」刊行

「犀星映画日記」=2021年1月25日、金沢市片町1丁目、三井新撮影

 金沢三文豪の一人、室生犀星(1889~1962)が残した日記の中から、映画にまつわる記述を集めた「犀星映画日記」が出版された。犀星が残した映画評とは?

 犀星は1日に2本見るほどの映画好きで知られ、洋邦問わず、映画館に頻繁に通った。今回、犀星が35~67歳の間に書いた日記から、孫の室生洲々子さんが映画にまつわる部分を抜粋してまとめた。

 目に付くのは、名作や人気作への辛口評だ。恋愛映画「ローマの休日」には、「あとになにものこらない映画、近代オトギバナシである」、喜劇王チャールズ・チャプリンの「黄金狂時代」には「チャップリンは名監督ではあるが、名俳優に非(あら)ず」などと容赦ない。

黒澤明監督は称賛

 一方で、「羅生門」の黒澤明監督に対しては、「愉快な仕事ぶりに感心した。戦後、監督というものの仕事らしい仕事を、はじめて見た」と称賛。1934年に発表した自身の短編小説「あにいもうと」を、成瀬巳喜男監督の手で映画化されたものについては「まず成功したといってよい、成瀬監督のこまかさがよく行きとどいている」。

 そのほか、映画館の座席の埃(ほこり)っぽさや悲劇に涙する係員、帽子をかぶったまま鑑賞する客などの記述も盛り込まれている。

 版元は「亀鳴屋」(金沢市大和町)。今回は、洲々子さんが、室生家の思い出の料理を紹介する「をみなごのための室生家の料理集」、おしゃれな犀星のエピソードをまとめた「犀星スタイル」などに続く犀星本第5弾。担当の勝井隆則さんは「世間の評判に左右されず、映画について、犀星が自分のふるいにかけて『いい悪い』を書いているのが醍醐(だいご)味」と話す。

 洲々子さんは、室生犀星記念館(金沢市千日町)の名誉館長も務めている。「映画日記をきっかけに、犀星の読者が一人でも増えれば」と話していた。

 犀星映画日記は変型B6判、全128ページ。カラフルなイラストは武藤良子さん。1300円(税抜き、送料別)。購入は亀鳴屋のホームページや電話(076・263・5848)で。室生犀星記念館でも販売している。

朝日新聞デジタル2021年03月23日掲載