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『友達0のコミュ障が「一人」で稼げるようになったぼっち仕事術』書評 のんびり働く工夫を丁寧に伝授

評者: トミヤマユキコ / 朝⽇新聞掲載:2021年05月08日
友達0のコミュ障が「一人」で稼げるようになったぼっち仕事術 著者:末岐碧衣 出版社:アルファポリス ジャンル:人生訓・人間関係・恋愛

ISBN: 9784434285721
発売⽇: 2021/04/01
サイズ: 19cm/238p

『友達0のコミュ障が「一人」で稼げるようになったぼっち仕事術』 [著]末岐碧衣

 著者はフリーランスのシステムエンジニア。会社勤めをしたこともあったが、まったく向いてなかったという。会社を辞めたあとも、小説家やインフルエンサーを目指し、次々に失敗したらしい(完全なる迷走!)。そんな彼女が、自分のペースでのんびり働けるようになるまでのストーリーを開陳しつつ、働く人の役に立つ知恵を授けてくれる。
 「コミュ障」や「ぼっち」は治さなくていい、というのが本書の基本スタンス。苦労はしなくていいけど、工夫はしましょう、くらいの感じがありがたい。
 工夫の柱となるのは、「コミュニケーション」「働き方」「お金」「メンタル」の4本。仕事仲間と必要以上に仲良くなる必要はないけれど、半年に1回くらいは連絡をして「忘れられない」を目指しましょうとか、人に愚痴れないなら「ゲロ袋日記」を作って、辛いこと苦しいことを書きまくりましょうとか、ひとつひとつの難易度はそう高くないのだがそれらをかなり丁寧に解説しているのが印象的だ。
 実はこれ、人付き合いが苦手なコミュ障を心配すればこその親切設計。「私もコミュ障だからわかるのですが、相談相手が少ないので、コミュ障は一人で考えこみ、1つの選択肢に自分を追いこんでしまう傾向が強いです」……たしかに。真面目で他人を頼れないからこそ陥る孤独がある。
 実はこの孤独、コミュ障以外の人も陥る可能性があるんじゃないだろうか。友達と休みが合わないことや、コロナ禍による在宅勤務も、人をぼっちにする。物の見方が偏り、判断を誤ることだってあるだろう。
 その意味で本書は、コミュ障向けの本であると同時にあらゆる人の中にあるコミュ障的な部分に訴えかける本にもなっている。さらに言えば、「ふつう」からちょっとはみ出したくらいで大幅減点される社会は、いい加減変わるべきだという気持ちになってくる。働き方に、もっと多様性を。そう言いたくなる本だ。
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すえき・あおい システムエンジニア。就職後、うつになり休職。1人でできる仕事に専念し、2015年にフリーに。