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山本ゆりさん 「おしゃべりな人見知り」インタビュー 細部まで無駄を詰め込んだヘンで笑える料理の読みもの

山本ゆりさん

 大学4年の時、不器用で面倒くさがりだからこその料理ブログを始めた。それはやがて編集者の目にとまり、身近な材料で簡単にできるレシピ本『syunkonカフェごはん』シリーズとして刊行され、いまや累計630万部のベストセラーになっている。ブログには日常の出来事もつづられ、それらはエッセー本になってきた。本書は5年ぶり、3冊目のエッセーだ。

 料理好きというとおしゃれな暮らしを想像しがちだが、そういうのは出てこない。手縫いゼッケンに苦闘し、豆腐のフタ開封に格闘し、洗濯物を畳むのが嫌で娘から靴下のありかをきかれると取り込んだ山を指して捜索を指示する……。その日常の断片のつまみ上げ方、伸ばし方は深夜ラジオをきいてるような面白さ。無駄をそぎ落とすどころか細部まで無駄を詰め込む。「価値とか意味がなくて全然いいんじゃないかと。無駄をどうとらえるかだと思います」

 小学生のころからレシピ本が好きで、毎日飽きずに読んできた。加えて厳しい状況下でもどこかに笑える部分を探すタイプ。「ふざけたレシピ本はなかったから、ヘンで笑える料理の読みものがあったらいいかもと思ってブログを始めました」

 学生だったので、だれかのために作るのではなく、自分のため。料理につきまとう“愛情”や“お母さん”っぽい雰囲気はむしろ苦手だった。「料理は“手間暇”と“愛情”のセット売りがすごい。時間をかけなくてもおいしいものはできるし、手間をかけたい人はかければいい。人それぞれでいいのではと思ってた」

 エッセーも風通しがよい。

 ツイッターのフォロワーは100万人を超える。「今も日常生活でうまく言葉にできない気持ちがたくさんある。それをなんとか言葉にしていけたらと思っています」(文・加来由子 写真・菊池康全)=朝日新聞2021年5月29日掲載