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「沖縄戦の戦争遺品」書評 遺骨収集に同行、実感伝える写真集

評者: 生井英考 / 朝⽇新聞掲載:2021年06月26日
沖縄戦の戦争遺品 著者:豊里 友行 出版社:新日本出版社 ジャンル:写真集

ISBN: 9784406065610
発売⽇: 2021/04/10
サイズ: 17×19cm/93p

「沖縄戦の戦争遺品」 [著]豊里友行

 ふだんは被写体のすぐそばまで顔を寄せた人なつこいスナップショットの多い写真家が、本書では違う顔を見せている。
 懐中時計の残骸、眼鏡、火炎放射で溶けた硝子(ガラス)瓶、陶片にこびりつく人骨、髪の毛、入れ歯、錆(さ)び果てた手榴弾(しゅりゅうだん)に軍用拳銃……。
 76年前のいまごろ、「本土防衛」の「捨て石」とされた沖縄で12万人以上の島民が犠牲を強いられた。県内各地のガマ(洞窟)から掘り出された誰かの遺品を、ひとつずつ手のひらにのせて確かめるように撮った写真集が本書である。
 沖縄戦当時6歳だった地元の国吉勇さんが、60年以上も続けた遺骨収集を取材してきた著者は1976年生まれ。同行中におじけづいてガマの外で待ったこともある。けれど国吉さんの無償の作業に9年も接したことで「沖縄そのものが丸ごと『戦争遺品』のようだ」と実感したという。高齢で作業を引退した国吉さんの収集品を引き継ぐ公的機関は、まだ現れていない。