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小泉今日子さん、本がテーマのPodcast「ホントのコイズミさん」で糸井重里さんと語った「本のこれから」

小泉今日子さん(右)と糸井重里さん(写真提供:Spotify Japan)

 小泉さんと糸井さんは、1983年に小泉さん出演のCMのキャッチコピーを糸井さんが手がけて以来、約40年の付き合い。2013年のNHK連続テレビ小説「あまちゃん」で共演したり、糸井さんが主宰する「ほぼ日刊イトイ新聞」のトークイベントに小泉さんが出演したりと、交流が続いています。

 コピーライター、作詞家など多くの顔を持ち、ウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」を主宰、「ほぼ日ブックス」などの出版事業も運営する糸井さんと、歌手、俳優、タレントやエッセイ執筆なども手がけてきた小泉さん。

 幼少期に何げない言葉で母親を強く傷つけたことに衝撃を受けたという糸井さんは「言葉の威力を思い知った」と、言葉を仕事とするに至った原点の体験を振り返ります。「ほぼ日刊イトイ新聞」の「ほぼ」に込めた思いについて「パキとしたものは、他人を苦しめるし、自分を追い詰める。自分の純粋さを際立たせるには他人のあいまいさを追い詰めること。それは世の中を悪くするんじゃないだろうか」と説明。小泉さんも「毎日、今日は今日の私。昨日はこうだったけど、そういう自分を許してあげるのも大事かな」と応じます。

 この日の収録は「本」そのものを離れ、これまでのお互いの歩みや「ことば」を巡る思いなど、話はどんどん広がっていきました。収録後「もう10回やりたかった」と小泉さんは笑顔を見せました。

こういうときこそ、本はチャンス

小泉今日子さん

 収録後、お二人に聞きました。

――あえて「本」をテーマにしたPodcastを配信しているのはなぜですか?

小泉 今の本屋って、すごく多様化していますよね。フェミニズムや韓国文学しか置かない本屋とか、LGBTQに特化した出版社とか。きっと本屋をつくるとき「本を売るというより別のことを伝えたいんじゃないか」って気がしたんです。その「別のもの」を聞いてみたかった。その人のルーツや子どもの頃、青春時代に答えが隠されていることが多くて、そういったお話を聞けるのが面白いところです。

――ネット動画全盛の時代ですけど、あえて「音」で伝えるメリットって何ですか?

小泉 (内田)也哉子ちゃんが言ってたけど、子どもの学校の送り迎えに、車を運転しながらでもちょうど1本聴けるんですって。私もそうですけど、家で掃除や家事をしているとき、テレビをつけていると進まないんですね。そういうときにいいと思います。

――糸井さんはテレビやウェブサイト、書籍、CDなど様々な舞台を又にかけて活躍されていますが、やはりメディアごとに伝わり方などの特性を考えて発信しているんですか?

糸井 まったく考えないんです(笑)。戦術の方に走りすぎてしまう気がするんで、それより何が言いたいのか、何が見たいのか、聞きたいのかが大事。「活字の世界でやってきた」という意識もあまりありませんでした。言葉という意味では同じですけどね、写真も音楽も、僕自身が受け手としての興味が先にあったものだから。あまり効率のいい特性を考えるということは、ずっとできなかったことの一つですね。

 ただ、「ほぼ日の學校」というオンラインの学校をはじめたんですけど、音声だけで聴いている人も結構多い。動画でも文字でも利用できますけど、重要なのは音声だったとつくづく思ってますね。

糸井重里さん

――ネットの時代、出版不況や活字離れと言われて久しいですが、「本」に可能性は?

小泉 こういうときこそ、本はチャンスなんじゃないかという気もするんです。だからみんな面白いコンセプトで本屋さんをやっている。本は「そこにあれば手に取るかもしれない」というチャンスが絶対にあるんだけど、それを少しでも伝えられたら。

 それと、今の若い世代は電車の中でもずっとスマホを見てますけど、使い捨てフィルムカメラの「写ルンです」が流行ったり、アナログなものを新しいものとしてとらえることがすごく増えてきている。若い人にはそういう楽しさも伝えたいし、アナログで育ってきた私たちの世代には、「何歳のときにこの本に出会った」「私もそうだった」という体験を、共感として共有できたらなって思います。

糸井 語弊があるかもしれないけど、負け戦の陣地でも戦い方はあるので、そこでいい戦いをして逃げ出せば次の場所が見つかる。「ほぼ日」のウェブサイトでも、効率よい検索の方法みたいなことはまったく導入してません。その古くささが後に観光地になるってこともあるんで、日本の古いお寺も、木造建築だからこそ、たくさんの人が今も訪れてくれる。そういういちばんメインの流れにないところにあるものに、足場を置いてもいいんじゃないかと思っているんですよね。

 本はもっと、遊べるおもちゃだと思うので、今年から来年、再来年にかけて、本で大遊びしようと思ってます。まだ詳細は言えないけど、「こんなに遊べるんだ」っていうことがいろいろ分かってきた。スマホは日常生活で使っているし、ユーザーとかコンシューマーとしては自然な流れが入ってきているわけだから、頑固に昔のものにこだわっているつもりは全然ないです。

音声はこちら

 Podcast「ホントのコイズミさん」糸井重里さんとの収録回はこちらから。

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