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横関大さんインタビュー 「ルパンの娘」シリーズは「読者だましたくて、自分もわくわく」

横関大さん=門間新弥撮影

 ちりばめられた謎、興奮たっぷりの疾走感、場面切り替えの鮮やかさ、最後のどんでん返しのカタルシス……横関大(よこぜきだい)さん(46)の小説には、そうした要素が満載だ。一気読み必至の作品を、次々と生み出す秘訣(ひけつ)とは?

 代表作は「ルパンの娘」シリーズ(講談社)。第5作『ルパンの絆』まで続いており、累計発行部数は文庫を含めて42万部に達した。深田恭子さん主演でテレビドラマ化、映画化されたことでも知られる。「泥棒一家の娘と警察一家の息子の恋愛という現代版ロミオとジュリエット。それをふと思いついた。このアイデアを話すと、編集者の顔色が変わった。『絶対に書くべきです』と言われた」

 脱稿したときに「ヤバいものを書いてしまったな」と思った。「これは売れるんじゃないかと」。すぐに続編のオファーが来た。第2作から、探偵一家の「ホームズの娘」に加えて究極の悪役女性も登場。第5作は「シリーズ史上最高傑作」と銘打たれた。殺人事件と誘拐事件が交錯し、登場人物たちが躍動する。

 少年時代に読みふけったのがモーリス・ルブラン作の「アルセーヌ・ルパン」シリーズや漫画「ルパン三世」。制作の礎になっている。

 26歳で入庁した静岡県富士宮市役所で職員として働きながら、推理作家の登竜門といわれる江戸川乱歩賞に8年連続で応募。最終候補作に3回残った後の2010年に「再会のタイムカプセル」(『再会』に改題、講談社文庫)でついに受賞した。

 なかなか受賞に至らない時期、心が折れそうにならなかったのか。「まったくならなかったですね。冗談半分で言えば、公務のようなもの。書いて当然。30歳で乱歩賞の最終候補になったことも支えになった。いつか世に出るのではないか。勝手にそう思っていました」

 4年前、約16年間勤めた市役所を退職し、作家一本に。おおまかな流れだけ決めて書き進めるのがスタイルだ。次の展開もキャラクターが何を言い出すかも分からない状態が楽しく、わくわくする。

 読者をだまし、驚かせるのが好き。「どんでん返しがうまく決まった」と挙げるのが2作品。『ピエロがいる街』(同)は「会いに行ける市長」と人助けに励むピエロを軸に人間模様が描かれる。ピエロの正体が判明すると、それまでの世界が反転する。タクシー運転手が主人公の『スマイルメイカー』(同)は、最後の場面で多くの読者はひっくり返るだろう。

 最新作は『ミス・パーフェクトが行く!』(幻冬舎)。「ミス・パーフェクトというあだ名を持つ主人公がパーンと浮かんだ」。総理大臣の娘が機知と行動力で世直しを敢行。「令和の完璧(パーフェクト)ヒロイン」としてシリーズ化の予定だ。

 「次の日に仕事や学校があるのに、あと1ページ、あと1ページと読んでもらえるような作風でありたい。若い世代には、僕の作品でなくてもいいから、そんな経験をしてほしいと思っています」(西秀治)=朝日新聞2022年1月29日掲載