第1位:「おせち」(内田有美/文・絵 満留邦子/料理 三浦康子/監修、福音館書店)
第1位に輝いたのは、内田有美さんが文と絵を担当し、満留邦子さんが料理、三浦康子さんが監修を務めた『おせち』。黒豆、数の子、きんとんなど、おせち料理に込められた願いを磨かれた言葉と美しい絵で丁寧に紹介した作品です。
受賞コメントで、絵本の制作に携わった皆さんに感謝の気持ちを述べた内田さん。続けて、「季節ものなので、書店に並ぶ期間が短い作品なんですけれども、その短い期間の間に華やかに展開して応援してくださった全国の書店員さん、それから本を手に取ってくださった方、全ての方に感謝します。これからも幅広い年代の方が楽しめる作品を届けられるよう頑張りたいです」と、全国の書店員さんや読者の方々への感謝の思い、今後の意気込みも示しました。
第2位:鈴木のりたけ「大ピンチずかん3」(小学館)
2022年に第1作が発売され、シリーズ累計270万部を突破するほどの大ヒットシリーズとなった「大ピンチずかん」の第3弾が第2位に入賞。
作者の鈴木のりたけさんは、このシリーズがなぜこれほど売れているのか、独自の考察を披露してくれました。「やっぱり言ってみれば“あるある本”なんですよね。みんなが日常の中で感じたことがある、見たことがある、やったことがある失敗や大ピンチというのは、話題になったときに話に入ってきやすいし、盛り上がってみんなが幸せになる時間が生まれる。それがいちばんの理由だなと思っています。それと、自分ごととして本を読むということがやっぱり必要だったんだというか、みんなも好きなんだなと、「大ピンチずかん」シリーズを作っていくなかで改めて発見しました」
第3位:阿部結「どろぼうジャンボリ」(ほるぷ出版)
風変わりな泥棒のジャンボリは、夜ごとみんなの家に忍び込んであるものを盗み出し、宝箱にコレクションする日々。ところが、ある日、そんな毎日が一変し……。
受賞コメントで、本作が生まれた背景を明かしてくれた阿部結さん。「この作品は4年前に目に映った戦争の現実から、それに加担せずに日常を奪われないために、自分は何をしなければいけないのかと考えたことをきっかけに作り始めた物語でした」
さらに、本作りへの深い思いも語ってくれました。 「私は毎日本を読みます。本を読むことができるのは日常があるからです。作家として本を作り続けること、そしてできた一冊を書店員さんたちが読者へ届けていくことは、読者の日常をささやかに守る行為だと思います。自分を、日常を、自分たちのやり方で守っていくことが、いまも起こり続けているあらゆる争いに抗う一つのアクションになるのではないかなと思っています」
第4位:ヨシタケシンスケ「まてないの」(ブロンズ新社)
赤ちゃんのときから筋金入りのせっかちで、学校も仕事も子育ても待つことができない。いつもかけ足足踏みで日々を送る主人公が、おばあちゃんになって、ちょっとだけ立ち止まってみたら――という作品です。
ヨシタケシンスケさんは、「待てない」には2種類あると分析。「一つは、自分がやりたいことのスピードに周りがついてこないという、他人を待つことができない『待てない』。もう一つは、ほんとうは自分のペースでやりたいんだけれども、周りに置いてかれるんじゃないかと焦って、早くやらなきゃという気持ちになる、自分自身を待ってあげられない『待てない』。僕は後者の場合が多いです」
この本自体が出版社から「なんとか2025年中に出さないと困る」と言われて生まれた作品だということも明かし、「本作りってそう考えると、待っている側と待たせている側のせめぎ合いの中で生まれていくものなんだな」と振り返りました。
第5位:鈴木のりたけ「たれてる(?と!のえほん 1)」(ポプラ社)
『たれてる』は、ドーナツに上からチョコレートをかけたら、あれ、ちょっとかけすぎ? たれてる、たれてる――。たれてる先で思わぬ展開が連鎖し、ページをめくるたびに驚きと笑いが広がる絵本。「?」の好奇心と「!」で発見・理解する爽快感が楽しめる、鈴木のりたけさんの新シリーズです。
「この絵本はこれまでの自分の作品とは毛色の違う絵本。絵の密度と完成度でポンポン見せていって、言葉や文化を超える、感性だけでどんどん気持ちが盛り上がるような、そういう絵本になっています。『たれてる』というアイデアは、自分の子どもたちとふだん過ごしているなかで、ソースなどをかけるときによそ見して、『あー、たれてる、たれてる』という、どこの家庭でも1つの場面として記憶にあるようなシーンからアイデアがスタートしました」と鈴木さん。同シリーズは2作目の『切れてる』も出版済み。『○○てる』と韻を踏んでいるタイトルから、「次は“何てる”ですか?」と聞かれることが多いのだとか。「受け手側が楽しみに想像する余地もあって、タイトルもすごく気に入っています。どんどん作品を増やして、長く続けていきたいシリーズです」と、意気込みも語ってくれました。
第6位:「おばけずし」(苅田澄子/作 柴田ケイコ/絵、金の星社)
苅田澄子さんがお話を、柴田ケイコさんが絵を担当。いつもひまなお寿司屋さんが「おばけでもいいから来てくれないかなぁ」とつぶやくと、本当におばけがやってきて初めてのお寿司に舌鼓。すると、お礼におばけの魚を釣ってきて……。おばけが握ったおばけの魚の “おばけずし”を見るだけでも楽しいユーモア絵本です。
実は「この話は7、8年ぐらい前に書いて、自分でボツにして、ずっとパソコンの中に入れっぱなしだった」という苅田さん。「それにこんな素晴らしい絵を柴田ケイコさんが描いてくださって、このお話を掘り起こしてくれた出版社の皆様にも感謝の気持ちでいっぱいです」と感謝の言葉を述べると、雑誌「MOE」との出会いについて振り返りました。「当時は『月刊 絵本とおはなし』という雑誌名で、中学2年生のときに初めて手にして、本当に衝撃を受けました。絵本は子どものためだけではなくて、大人のためのものでもあるんだなと。多分そのときこの雑誌に出会わなかったら、今こうしてお話を書いていなかっただろうなと思います」(苅田さん)
一方、柴田さんは、読み聞かせボランティアをしていた時に苅田さんの作品をよく読んでいて、大好きな作家だったため、本作の仕事の依頼を喜んで受けたといいます。「おばけが作るお寿司ってどんなんだろうって想像するのが楽しくて、自由に描かせていただけたのがすごくありがたかったです」(柴田さん)
第7位:「モモ(絵本版)」(ミヒャエル・エンデ/文 シモーナ・チェッカレッリ/絵 松永美穂/訳、光文社)
ミヒャエル・エンデの名作刊行から50周年を記念して企画された絵本版。翻訳者の松永美穂さんは、ふだんはドイツ語文学の翻訳をしているため、このような賞をいただけるとは予想していなかったと驚きを語りました。「翻訳を始めた当初は小説の翻訳がすごく多かったのですが、あるときから絵本の翻訳もしてみたいなと思い、ドイツで買った絵本を出版社に持ち込むなどしていたのですが、なかなか実現しませんでした。15年ぐらい前にフリーの編集者の方が声をかけてくださって、初めての絵本ができてすごく嬉しかったのをおぼえています。今回、50年以上前に書かれた名作の絵本を私が訳すことができて本当にありがたいです」(松永さん)
絵を担当したシモーナ・チェッカレッリさんからはビデオメッセージが寄せられ、「『モモ』は私にとってとても大切な物語です。耳を傾けること、時間そのもの、そして相手のために心を向ける時間を分かち合うことの大切さを思い出させてくれます。この度の受賞について、読者のみなさん、そして書店員のみなさんに、心から感謝しています」と語りました。
第8位:鈴木のりたけ「ぼくのいえ」(PHP研究所)
今回3作がランクインとなった鈴木のりたけさん。その人気ぶりがうかがえます。『ぼくのいえ』は同じような家ばかり並んでいる中で、もしもこんな家があったらと空想が水陸空を自在に駆け巡る作品。2009年に絵本作家デビューをした鈴木さんが、2010年に出版した『ぼくのおふろ』から始まる「ぼくの~」シリーズ6作目です。
「毎日同じだから、ちょっと違うようにならないかなっていうフォーマットが決まっているシリーズ。なんでもそこに当てはめると面白くなるんです。自分の中ではアイデア増幅装置みたいになっていて、自分でもうまいことフォーマットを作れたなと思っています。初期作のシリーズがこんなに続いて、6作目でも書店員さんに選んでもらえるなんて、感慨深い気持ちでいっぱいです」と喜びの言葉を述べました。
第9位・新人賞:押本達希「すいかのたね」(ブロンズ新社)
押本達希さんのデビュー作『すいかのたね』が第9位と新人賞の第1位をダブル受賞という快挙を達成。真っ赤なスイカから抜け出した黒い種が、アリやオタマジャクシなど姿かたちが似ているものに紛れて冒険する物語です。
押本さんは「ダブル受賞のお知らせいただいたときはうれしかったんですけど、スピーチのために2回登壇しますと言われて、すごく憂鬱でした」と正直な気持ちを披露。「『すいかのたね』の発売が夏で、(MOE絵本屋さん大賞の)投票期間が秋からだったので、書店員さんたちの記憶にまだ新鮮に残っていたんだろうなと、今回の受賞は本当にラッキーだったと受け止めています」と謙虚に語りました。
2015年の大学1年生の時に絵本作りを始めて、2025年でちょうど10年目を迎えたという押本さん。「10年目という節目の年にこんなすてきな賞を受賞することができて、とても救われました。絵本っていうのはもう出尽くしている感があって、新しいものを作るのは非常に難しいんですけども、隙間を狙ってこれからも何か作り続けられたらと思います」
第10位:柴田ケイコ「パンどろぼうとスイーツおうじ」(KADOKAWA)
人気シリーズ「パンどろぼう」の7作目。本作の舞台は「スイーツおうこく」。スイーツばかり食べる食わず嫌いな王子のために、パンどろぼうが大活躍します。
本作でこれまでのシリーズにはなかった絵探しや迷路にも挑戦した柴田ケイコさん。「いままでそういった細かい絵を描いてきたことがなかったので新たな挑戦ができたことが自分としてはすごく楽しかったです。そんな楽しんでいる私の気持ちが読者の方たちにも伝わったらいいなと思いながら仕上げていきました。これからも、パンどろぼうくんがいろんな人の手にとっていただけるよう、私自身も楽しみながら作品作りをしていきたいと思います」と語りました。
ファーストブック賞:はらぺこめがね「おにぎりぱく!」(白泉社)
0歳から2歳向けの絵本を対象としたファーストブック賞の1位には、はらぺこめがね作『おにぎりぱく!』が選ばれました。本物みたいなおにぎりを一口パク、中身は鮭、ツナマヨ、昆布、たらこ、そしてびっくりするような中身も登場する作品です。
はらぺこめがね(原田しんや・関かおりの夫婦イラストユニット)からは、ビデオメッセージが寄せられ、「おにぎりと一緒にロマンが詰まっておりますので、これからもたくさん読んで、笑って、夢いっぱい召し上がってください」というメッセージとともに、「おにぎりが嫌いな子も楽しめる絵本になっています」とアピール。ちなみに2人が好きなおにぎりの具は、原田さんが「酸っぱい梅干し」、関さんが「甘い梅干し」なんだとか。
「MOE」2026年2月号では1位から30位までのランキングや受賞作家のインタビューなど、盛りだくさんの内容で第18回「MOE絵本屋さん大賞2025」を特集しています。さらに全国の書店では、受賞作フェアが開催されています。ぜひ書店に足を運んで、気になった絵本を手に取ってみてください。