評者: 隠岐さや香
/ 朝⽇新聞掲載:2026年02月14日
歴史のなかの奇妙な仕事
著者:ニコラ・メラ
出版社:原書房
ジャンル:文学・評論
ISBN: 9784562075836
発売⽇: 2025/11/26
サイズ: 18.8×2.4cm/310p
「歴史のなかの奇妙な仕事」 [著]ニコラ・メラ
時代と共に消えていく職業はある。そうしたものを私たちはしばしば記憶から葬り去ってしまう。まるでゴミを棄(す)てるかのように。しかし社会の多数派がそうでも歴史書にとってはゴミの再利用こそが命である。皆がくだらないと背を向け、忘れられたものほど味わい深く、面白くなる。
本書は敢(あ)えて、今日では危険、汚い、卑しいとされる職業、それも忘れられ、歴史にほとんど名を残さなかった人々の仕事に迫っている。職業ごとの短い項目がたくさんある形式の本なので、どこから読んでも面白い。
現代より遥(はる)かに不衛生な街で命を賭けて廃品回収や掃除を行った人々の生き様には圧倒される。王族のトイレを世話したり、王子の代わりに鞭(むち)で打たれたりする人もいた。何年も海を見つめる灯台守の人生は現代では想像が難しい。錬金術師や剣闘士は漫画の世界には今も生きている。
仕事はしばしば苦痛や拘束をもたらすが、私たちは人生の多くの時間をそれに費やす。我々は一体何をしているのか。肩の力を抜き、我が身を振り返るのも悪くない。