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九段理江さん「Schoolgirl」インタビュー すれ違う母と娘の距離

九段理江さん=中村真理子撮影

社会に生きる、現代の「女生徒」

 受賞こそ逃したものの、芥川賞選考会で次点という高い評価を受けた。九段理江さんの『Schoolgirl』(文芸春秋)は、太宰治の「女生徒」を本歌取りした表題作が芥川賞候補として注目された。あわせて収録したデビュー作、ともに女性が社会に生きる苦しさが込められている。

 「Schoolgirl」は「女生徒」に刺激を受けて書き始めたという。「目を覚ましてから眠るまで、少女の何げない1日を書くことがその人の本質を浮かび上がらせる。ほかの女の子の1日も見てみたい、と興味がわきました」

 「私」には14歳の娘がいる。顔を合わせればすれ違いばかり。娘は動画サイトで世界に語りかけている。環境問題について、お母さんについて。娘は「女生徒」を通して、母もかつて少女であったことを知る。母と娘は少しずつ近づいていく。

 「女生徒」の少女が「お母さんにとっての良い子」であろうとしたのに対し、「Schoolgirl」の娘は「世界にとっての良い子」になろうとしている。「SDGsとか、社会に貢献しないといけないという気持ちを年下の若い世代から感じています」

 昨年「悪い音楽」で文学界新人賞を受けてデビューした。選考委員の講評には厳しい言葉もあった。「好きなことを自由に書いてはわけのわからないものになる。評価されるものを目指して書いた」のが2作目だったという。次の題材は競走馬と決めている。「優れた作品はすでにたくさんある。あえて自分が書く意味を考えています」(中村真理子)=朝日新聞2022年2月9日掲載