私の住む市では、リサイクルセンターに古紙や空き缶などを持って行くと、その重量に応じて、スタンプカードに捺印(なついん)してもらえます。
小学生の頃のラジオ体操を思い出し、がんばって集めるぞ! と小さなお菓子や歯磨き粉の箱なども、平たくつぶして紐(ひも)でくくり、月末ごとに、自動車でリサイクルセンターに運ぶようになりました。
そして先日、ついにスタンプがいっぱいに! はりきって市役所の窓口に持って行き、クオカードと交換してもらいました。2冊目もがんばるぞ、と自分に誓います。
帰宅すると、家の中全体にすがすがしい空気が流れているように感じます。これぞ達成感。そのまま、リビングでタブレットを開き、ユーチューブの動画を再生しました。画面に現れたのは高原の美しい景色、ではありません。ゴミ屋敷です。片付けや掃除の動画に興味を持つようになったのは、自分がリサイクルを意識するようになってからです。
動画を見て気付いたのは、家がゴミ屋敷化してしまうのは、住人の片付けに対する意識が低いからとは一概に言えないのではないか、ということです。特に一人暮らしの高齢の女性の場合に、そう感じました。
床を塞いでいるのは、積み重ねられた新聞や段ボール、そして、段ボールの中にはカラのペットボトルがぎっしりと……。この家の人は、これらを普通ゴミとして捨てられず、リサイクル品として所定の場所に出さなければという意識はあるのに、気力や体力が追い付かず、溜(た)まり放題になっているのではないか、と。
私だって、リサイクルをがんばろうという意識を持ったまま仕事が忙しくなると、あっという間に同じ状況になりかねません。リサイクルは良いこと、大切なことです。だけどそれは、自分の状況に向き合いながら可能な範囲でやればいいことで、可燃ごみの袋に新聞紙を入れることを後ろめたく感じる必要はないのだと、少し先の自分へメッセージを残しておこうと思います。=朝日新聞2022年4月20日掲載