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技術と共進化する道探る「データ管理は私たちを幸福にするか?」 杉田俊介が選ぶ注目の新書2点

『データ管理は私たちを幸福にするか?』

 「わかっている」が「できない」。人間は想像以上にダメな生き物だ。堀内進之介『データ管理は私たちを幸福にするか?』(光文社新書・968円)を読むと、我々の暮(くら)しはすでに、健康管理や作業効率など、人間のダメさを補完する無数の技術なしには成り立たないようだ。スマホに行動を管理されているみたいだ、という不安は残るだろう。しかし驕(おご)らずに技術を「慎重に」用いれば、「巧(うま)く生きる」のみならず、利他的に「善く生きる」ことが可能だ。本書は現状を基本的に肯(うべな)う。技術万能論でも技術嫌悪でもない。機械と深くもつれ合いながら、人間の倫理や知性もまた共進化していくのだろう。
★堀内進之介著 光文社新書・968円

『NHKスペシャル取材班、「デジタルハンター」になる』

 NHKミャンマープロジェクト『NHKスペシャル取材班、「デジタルハンター」になる』(講談社現代新書・1034円)は、OSINT(オシント)という手法で近年のミャンマーを報道したチームの記録。現地市民の投稿映像、地図情報、衛星画像などを駆使して、取材困難な戦地や国家に隠蔽(いんぺい)された真実に迫る。ここにも技術と共に人類は知性化=倫理化しうるという肯いがある。  真実はスクープ合戦ではなく、無名の市民たちの記録のシェアの中にある。弾圧される人々のデジタル・レジスタンス。本書を陶酔的な旧(ふる)い日本人のプロジェクトXとして読むなかれ。
★NHKスペシャル取材班著 講談社現代新書・1034円=朝日新聞2022年7月16日掲載